100年後でも学校はそんなに変わらないらしい
学校
「花音、おっはーよう!」
「おはよう、叶芽ちゃん。」
学校までの道のりを辿る登校中に考え事にふけりながらトボトボと歩く巨銀 花音の後ろから彼女に挨拶をしたのは、
花音の友人で学校のクラスメイトであった。
「どうしたの?何か考え込んでたっぽいけど。」
「…大丈夫大丈夫、特に何も無いよ。ありがとね。」
そこまで考え込んでいたのが行動に出ていたのだろうか、と心の中で疑問を抱きつつもそう誤魔化す花音は先日すぐ近くで起きたデパートでの立てこもり事件の事を考えていた。
普段ならどんな魔法少女が対処したのか、とかそんなのがテレビで出回るはずなのに、それがなかったのはやっぱり世間に知られていない葵さんがその事件の対応をしたからなのかな?
そんな事を考えていると、やはりその様子を見て叶芽が話しかけてきた。
「やっぱ何か考えてるじゃん。どうしたの?ほら、言ってみ?魔法少女関係?」
「YESかNOで答えるならYESかな。」
「やっぱり?私天才かもしれん。」
叶芽は魔法少女では無いのだが、私が魔法少女バレットとして活動している事を知っている。
と言うより花音は魔法少女の中でも結構カジュアルで、自身が魔法少女として活動している事を大っぴらに明かしているのだ。
それは正直なところ、最初のうちは軽めの承認欲求もあったのだが、大きな理由はこの街を守りたいからであった。
だから直ぐに、何かあった時に学校を抜けて対応を出来るようにと私は魔法少女としての素性を明かしているのだ。
しかしそれによって学校で私に近づく人は何故か減ってしまい、親友と呼べる存在は今私が会話している叶芽くらいしかいない。
「最近の魔法少女関連で言うと、例えばデパートの?」
「当たらずとも遠からずって感じ。」
実際葵さんの事について考えていたのだから正解だが、私がそれを詳しく言うのは違うだろう。
「実際結構近場で事件が起きてるってなると、なんだか怖いよね。」
「大丈夫、その時は私が守るから。」
なんてカッコつけたセリフを言ってみる。
実際これはカッコつけでも何でもなく私の自信なのだ。
私は変身前と変身後でそこそこと見た目が変わる為、巨銀 花音としての知名度はそこまでないが、才能に恵まれたおかげで私はいつの間にか魔法少女ランキング18位にまで到達していたのだから。
実質実力だけでそのランクに上り詰めたと言っても過言、では無いはず。
「さっすが、私達の学校が誇る魔法少女だけあるね!花音が男ならホレてたよ。」
「私が男なら魔法少女じゃないからね。」
なんて軽口を叩きつつも私は少し不安になっていた。
葵さんと別れた後に石原さんから終の三獣であるカタストロフの予兆について話されたのだ。
自信がある、なんて言ったものの正直カタストロフという魔獣には私は一切敵わないと思っている。
数人の命を守るだけなら、私でも可能なのかな?ならその内に叶芽ちゃんも入れられたらいいな。
「いやー、今日も学校が見えてきちゃったよ。憂鬱だねー。」
「そうだね、何より今日は1時間目から体育があるんだし。」
自分で言ってて悲しくなった。
魔法少女になれば身体能力が飛躍的に向上する私ではあるが、変身していない状態の私の肉体能力は絶望的なほどにからっきしなのだから。
「ほんと、花音って魔法少女やってる時はビックリするほどかっこいいのに普段はなんか、普通だよね。」
「普通で悪かったね!普通で!」
私が通っているこの学校は
そして私はそこの1年生だ。
クラスは3組で男女は18名ずつの36名構成でぼちぼち、本当に普通といったところだ。
そしてホームルームが始まる10分程前にクラスに入ってきた私と叶芽は他にいる友人に話しかけに行く等をしていた。
そしてその途中で1つ、気になる話題を私は耳に挟んだ。それは
「3組のクラスに用意されている席が1個増えてる。もしかして転校生じゃない?」
と言う話だった。
1年もそろそろ終わり、次は2年生に差し掛かる時期であったのでクラスの変更等も兼ねて、何ともいえない時期ではあるのだがそれでも少し私は浮かれていた。
と言うよりも誰しもが少しは浮かれるであろう、転校生が来るというイベント。
寧ろそれに無反応な人間の方が私は異常だと思う。
「転校生来るってまじ?」
「待て、まだ確定してないだろ。」
噂が広まりつつある中、私のクラスメイトの男子生徒が直接先生達の居る職員室にまで訪ねに行ったらしく、こんな情報を持ってきた。
「転校生確定っすわ!!しかも女子らしい!」
「まじか、有能。」
「ナイスぅ!」
1人が持ってきた情報によって、ざわついていたクラスに更に燃料が投下されたらしく、特に男子陣はまさに熱狂と言った様子だった。
「ねぇねぇ、花音。
転校生ってどんな子が来ると思う?」
そして、やはりその熱に浮かされたであろう叶芽が私に話しかけた。
勿論私もそっち側だ。
だから甘んじて全力でその話題に乗る事にした。
「女の子だって事は分かってるから…」
それは私の願望に過ぎなかった。
もし、葵さんがこの学校に来たならなぁ…
そう思ったからスルッとでた言葉。
「例えば、白色の髪の毛の子とか?」
まぁ、あるわけないか。
自分で言ってて少し笑ってしまった。
「なんかやけに具体的だねー。てか白色って、アニメとかじゃないんだから無いでしょ。」
そしてあっさりと叶芽に一蹴された。
転校生なのだから、ちょっとくらいの妄想は挟んでも良いでは無いかと文句を言いたかったが、そろそろホームルームの時間が迫っていたので叶芽に自分の席に着くことを促して、私も自分の席に座った。
チャイムがなると同時にクラスに先生が入ってきた。
それに待ちきれない複数名の生徒は大声で先生に対して
「先生!転校生来るってマジですか!」
「どんな子ですか!?」
「女の子って本当ですか!」
「可愛いですか!」
等と声を投げ掛ける。
それに対して私達の教師、
「よーし、入ってきて下さい!」
先生が扉の外に声をかけると、トコトコと廊下を歩く音が聞こえてきて、転校生がクラスへと入って来る。
そしてその瞬間からクラスのざわつきが最高潮に達した。
叶芽は私の方をギョッとした表情で見つめる。
白色の髪に少し達観した目つき、身長は160cm程で可愛らしい容姿。
そう、葵さんだった。
「それじゃあ挨拶、自己紹介お願い出来ますか?」
「はい。」
そういうと葵さんはカツカツとチョークで大きく、スラスラと自身の本名を黒板に書き残す。
「形無 葵と申します、親の用事で引っ越してきました。よろしくお願いします。」
そして挨拶をした。
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