任務終了

顔がボコボコになり口から血を流している赤髪と、それに跨り拳に血液が付着している白髪の少女と、壁にめり込んでいる魔法少女3名。そして足から血を流して呻いている男性が5人。


端的に見ればこのような状況であった。


「人の事をヤバイ呼ばわりするのはあまりよくありませんよ。」


それにエラさんが吹き飛ばした魔法少女5人と銃持ち5人も合わせて、まとめて端に寄せておいた。

大半が気を失っている所申し訳ないのだが、男たちの服をちぎって魔法少女の口に詰めておく。


赤髪が咄嗟に詠唱で能力を行使しようとしたように、ほかの魔法少女が目を覚ました時何が起こるかわからないのだ。


「うわ、だいぶ手馴れてるね〜」

「いや、このような無力化はあまりした事が無いです。それと、失礼しますね。」


「いや、やめ」


エラさんの横にいた水色髪、水無月の口にもちぎった服の塊を詰め込んでおく。

少し苦しそうではあるが、まぁ仕方がないだろう。


「なんか裏世界飛んでたらこの子がいたからキャッチしたけど、この子が転移持ちの子だよね?さっき君が人質にしてたし。」

「はい、そうです。

逃げられてしまいましたが、ありがとうございます。」


とりあえず会話を終えた私は次にどうするべきか、行動を仰ぐ為に自分のポケットをまさぐって、目的の機械の電源をつける。

ポケットから取り出したのは渡されていた無線機だ。

襲撃をかける時は相手に音が聞こえては行けなかったので電源を切っていたが、もう関係ないだろう。


「石原さん、石原さん、聞こえてますか?」

『聞こえている。現状は?』

「エラさんと共にデパート内戦力の制圧完了しました。殺してはいません。」

『よくやった。それと拘束されている人質がいたら解放して欲しい。』

「わかりました。」


そう言って大量に転がされている人質達の腕にくくられている縄をナイフで切っていく。

…怯えた目で見られるのは少し心外だった。

仕方がないだろう、魔法少女なんてキラキラした名前ではあるが、結局の所は魔獣という害虫駆除が仕事の人間なのだ。


しかも所詮は急に力を与えられた一般人でしかない、市民の模範的なヒーローという訳にも行かないのだ。

それに、その力を悪用する人だって居る。


「そんなに怯えないでください。

私は敵じゃありません。」

「は、はい。」


縄から解放した男にそう言うと、男はたどたどしく返事をして、すぐに私から離れる。

やはりどうやっても怖がられるのは仕方の無いことらしい。


にしても、テロ組織と言っていたからもっと強いメンバーがいると思っていたのだが、思っていたよりも呆気なかった。

赤髪はただの末端に過ぎないのだろうか?


いや、魔法少女20名程が組み込まれているこの騒動に権限を持っているのは赤髪だったはずだ。

とすると幹部辺りがそれらしいだろう。


「そうそう、そう言えば名前聞いてなかった。君、名前は?」

「私はリヴィアと申します。」

「へー、リヴィアね?うーん…聞いた事無い名前だ。最近魔法少女になったの?

あ、そうだ。私も私で連絡入れないとね。」


そう言って彼女がズボンのポケットからスマホを取り出し誰かと連絡を取り始める。


「ヤホ、なんか協力してくれた魔法少女と一緒にデパート占領してた組織のメンバー制圧したよー」

『ありがとうございます、と言いたいところですが、なぜ会議に来なかったんですか!

あれ程大事な要件だと言ったじゃないですか!』

「えぇ、だってアレなんか面倒じゃん。」


エラさんは自身の支部か、もしくはそれに着いているオペレーターに連絡を入れているようで、現在の状況の報告とここからどうすればいいのかを聞いていたようだった。


もう少しすれば警察が中に入ってくるらしく、そこでのびている人たちを回収してくれるらしい。

それを元人質の方達に話して、もうすぐでデパートから出られると教えておいた。

コレで多少なりとも精神的な不安は緩和されるだろう。


事情聴取等もあるらしいが、基本このように犯罪を犯した魔法少女は普通の人よりも罰則が重く、状況にもよるが他者を害した時点で基本的に死刑になる。


重すぎる等と言われる事もあるが、そもそも魔法少女を捕まえて監視しておく施設など作れる訳もなく、犯罪を犯した魔法少女を社会に放っておける何て事は無いのだ。


何より、それを理解した上で犯罪を犯しているのだから死刑も妥当だろう。

と言うのが私の考えだった。

世間一般がどうなのかは分からないが、少なくとも100年後の現在はそんなに感じらしい。


「へえ、会議に出てた魔法少女、椿さんとフォルトゥナさん倒したんだ、すごいね。

椿さんは魔法少女の中でも身体能力トップでしょ?」

『だからエラさんも見ておけばよかったじゃないですか。白いワンピースに水色の髪、小柄で可愛い魔法少女でしたよ?』

「はいはい、白いワンピースに、水色の髪?」


そう言ってエラさんはこちらを複数回見て、私の服装や髪の毛を凝視する。

どうやら通信機越しに伝えられた特徴が、今日あった会議のキーパーソンであった私とそのまま同じだったらしく、何かを察したようで再度通信機へと話しかけた。


「ねぇ、もしかしてそれってリヴィアって名前だったりする?」

『はい、どこで聞いたんですか?

ほかの魔女に教えてもらったとかでしょうか?』

「あー、さっき一緒に魔法少女と協力して制圧したって言ってたじゃん?

そういう事、一目見たいなとは思ってたけど、ラッキーだよね。」


エラさんの通信機越しに話していた女の人はその言葉を聞いて少しフリーズしたようだった。


とりあえず落ち着く時間を設けて、警察がこちらへ突入してくるまで待つことにした。

その間にエラさんが制圧した中央に配置されていたメンバー等も、赤髪達と同じ場所にポイしておく。

勿論魔法少女には口に何かを詰めておいて下手に詠唱出来ないようにしておく。

縄で拘束しようにも魔法少女のスペックなら普通に引きちぎられるし、倒れている男達と同様に足の健を切ったりしようとしたのだが、それはエラさんに止められた。


ので仕方なく今はテロリストの山を眺めておく事にする。


「にしても、最初はただのアシスト役の魔法少女かと思ってたけど、普通にリヴィアちゃん絶対私より強いよね?椿さんとフォルトゥナさん同時に相手した挙句倒せてるんでしょ?

何が「なるほろ?つまり私のサポ要員って訳だ。」だよ!

イキっちゃったよ私、自分より強い相手に!」

「1体1なら多分そうですが、結局は能力の相性にもよりますから、なんとも言いきれませんよ。」


実際私の能力はステルスによる不意打ちに特化しているので多人数を同時に相手取る事は苦手だし、範囲攻撃を行える魔法少女と比べるとそこには得意不得意が生まれて来る。


「雑なフォローが傷に染みるよ……」


テロリストの山を監視しながら私はエラさんと雑談を行っていた。

勿論山の1番下は赤髪だ。


今日は会議で椿さんやフォルトゥナさんと戦って、その直後にはテロリストと戦うことになった。

思えばなんとも忙しい日だ。


そして、警察が入ってきたのは雑談を開始してからだいたい20分後であった。

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