電脳の魔女

「それでは、始めようかね。

一応私の所でリヴィアの情報は調べさせてもらった、まずは謝罪だ。」


浅葱さんが話を切り出す。

それと同時に浅葱さんは私に向けて唐突に頭を下げる。


「何の謝罪ですか?」


本当になんの事か分からなかったので浅葱さんに疑問を呈すると、浅葱さんは顔を歪めながら少し悲しそうな顔をした。


「100年前の管理局が君を体のいい魔法少女として扱い、年端もいかない少女に戸籍も与えずに飼い殺しにしてC級魔獣殲滅の任務だと言って終の魔獣へと君向かわせ、あまつさえ君を死なせてしまった事に、だ。」


……私の事ながら聞いていると中々にえげつないな。

それにしても、


「あぁ、あの魔獣への対処は意図して行われた、私にぶつけられた物だったんですね。

しかもサイトさんが予見していた終の魔獣の一体でしたか。

道理であれほど強かったわけです。」

「……本当に、すまない。」

「いえいえ、別にそれを実行したのは浅葱さんでもないし時間的にいえばもう100年は前の事なんですよ?

私もそんなに気にしていないです。」


浅葱さんは何もしていないというのに、多分根っからの善人なのだろう。

100年前の上層部にこんな人がいれば私の扱いも少しは変化していたのだろうか?

まぁ考えるだけ無駄だ。


「それはそうと凄いですね。確かに私は魔法少女のリストに名前だけは載っていたはずですが。

私の情報は大半を隠蔽されていた筈です…それを見つけたのは浅葱さんの横にいる魔法少女、でよろしいでしょうか?」


杜氏であった頃の記憶が生えてから考えてみるとすごい話だ。

政府が1人の少女を実質的に監禁して最強の魔獣専用兵器として扱っていたのだから。

それが通常の生活となっていた葵としてはそこまで問題がなかった訳ではあるが、今の杜氏であるなら娯楽をもっと要求していただろう。


生活は直々な国の管理下であったがお金には困らなかったのだ。

そう考えると謝罪をされる程の酷い事はされていないような……

戸籍無しで実質的無賃労働、アウト

最低限の教養を与えて学校にも行かせない、アウト

20歳にもなっていない子供を世界を破壊しうる魔獣3匹と戦わせて死なせる、アウト


……少し雲行きが怪しくなってきた。

まぁいいでしょう。

そんな考えごとで時間を潰しているとようやく目の前の少女が口を開く。


「正解!いやー、可愛いねリヴィアちゃん!こんな可愛い子を監禁する国とかもう死刑だよ!死刑!」


思ったよりも勢い強めの緑髪の少女は座っていた状態から勢いよく走り出し私の元へと飛び込んできた。


「ぐふっ」


魔法少女になっていない私はひ弱なただの女の子なのだ、あまり突進するのはやめて頂きたい。内臓にモロに来たダメージに私は呻いた。


「ノアさん、そこら辺にしておいて下さいね。リヴィアちゃんが絶望したような顔をしてますから。」


そんな状況の中救いの手を伸ばしてくれたのは花音さんだった。


「今のリヴィアちゃんは変身を解除しているのでただの人ですからね。」

「ありがとうございます、花音さん。助かりました。

それで、あなたは?」


先程の質問で彼女が魔法少女である事は確定した。ここからは少し興味本位のものでしかないが一応その素性も聞いてみるとしよう。


「ふっふっふ!よくぞ聞いてくれたな!

聞いて驚け!私は魔法少女ランキング9位 電脳の魔女 ノアだよー!

ちなみに言っておくと今日本にいる魔法少女の総数はリヴィアちゃん含めて5082人、いやーやっぱり私って凄い!

まぁ魔獣の討伐能力は他のランカーと比べてもぼちぼちなんだけどね!」


ふふん!とでも言いたげなその少女は無い胸を張って随分と偉そう、いや偉いのである。

実際ただの魔法少女と魔女においては国に対しての貢献度や国民に対しての知名度が格段に違うのだ。

それにあぁは言っているものの知名度や貢献だけでは魔女には認められない。

やはり何か奥の手を1つや2つ隠しているものだろう。


「それは凄いですね」

「自画自賛しといてなんだけど最強の魔女と謳われたリヴィアちゃんに褒められちゃうとなんか照れるなー。」


その発言で座っていた石原さんと花音さんがピシッと固まる。


「リヴィアさん、魔女だったんですか?」


花音さんの押し出したような声、それもそうだろう。魔女と魔法少女は段違いの存在、そんな事は誰もが知っている。

だから私は魔女を名乗りたくないのだ。


「まぁ既に過去の記録からも消されているようで誰も、覚えてない魔法少女なのですけれどね。」


私は軽く自虐をするように付け加えておく。


「少し、脱線しましたね。

情報のすり合わせの為に集まったというのに。」


そうだ、まずはここから話しておこう。


「わざわざ遠回りする必要も無いので言いますが、私にはおそらく前世の記憶があります。」

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