錯綜する情報共有

「それでは先に私から

まず質問をしてもいいかな?」

会話のスタートを切ったのは私、リヴィアだ。


『構わない、だがバレットに関する情報やバレットに対する質問は極力此方で答えさせもらうが、それでいいか?』

「えぇ、構いません。」


それでは質問を開始しよう、最初はそう。

ずっと気になっていた疑問だ。

今頃になってようやく気がついた事だが…


「ここはどこでしょうか?

私は確か政府からの命令で兵庫県の住宅街にてC級の魔獣を討伐していたはずなのですが…

周囲は半壊、いえ全壊しているとは言え私があの場所に倒れる時に見ていた光景とは随分と違うような気がします。」

『おっと、厄ネタか?

ここは兵庫県でも関西圏でもなければ関東の首都、東京だ。』


ほう、私が倒れている間に傷が全て回復して東京にまで飛ばされたと?

随分厄介、本当に厄ネタのようだ。

他人事ではなく文字通り私自身の問題な訳だが。


『そもそも倒れる時に見ていた光景って、

じゃあ次はこっちの質問いいか?』

「えぇ、勿論です。」


正直なところ私に対して速攻で攻撃を仕掛けてきたこの人たちに関しては第1印象は言うまでもなく最低レベルだが魔法少女をやる時点で味方からの誤射は慣れっ子だ。

いちいち気にしていてはやっていられないだろう。


『じゃあ質問するが、その言い方だと魔獣の影響で唐突にこちらへと送り込まれてきた政府の下に所属している魔法少女で間違いないんだな?』

「はい、送り込まれてきたと言うよりかはC級魔獣を始末していたら異常な程に強い個体が出現して相打ちとなって死んでしまい…

えぇ、確かに死んだはずでしたが気がついたらここにいました。」


少なくとも私の言っていることに間違いは無いはずだ。


『……これは俺の手に余るな、残念ながら俺はただのオペレーターなんだ。

とりあえずはあれだ、お偉いさん指示を仰げってやつだな。』

「と言うと?」


そう会話していると我慢の限界が来たようでバレットが騒ぎ出した。


「あー、もう!どうせ私がそっちまでリヴィアを連れていくことになるんでしょう!?

なら早くしましょう、私だって暇じゃないんです!

女子高生の日曜日の昼間は高くつきますよ!」

「日曜日?」

「待ってください、今のおかしな状況に加えて記憶喪失とか言い出すんですか?

今日が何年の何月何日か、分かりますか?」


バレットはどうやら高校生のようだ。

前にもこのような経験があったかのようにどうすればいいかを理解しながらも嘆いている。

まさにプンプンと言った擬音が似合う表情で、しかもこちらを少し睨みながら……

最初に見たあの「美しい」という感情は消え失せ確かに目の前の魔法少女がいち高校生である事を理解する。

いや、申し訳ない。

私も同じ高校生として、かつ杜氏だった時のリーマン生活の中でも休日はそれはそれは大事に使わせて貰っていたものだ。


「今日がいつかは分かりませんが私が魔獣と相打ちになった日は確か2032年の8月20日の金曜日だったはずです。

なので22日とかでしょうか?」

『……ふざけているなら今のうちに言っておいた方がいい。

もしそれが本当なら今すぐに、こちらへと向かってもらわねばなるまい。』


唐突に無線機から発せられた声は先程のオペレーターを名乗った人間の声とは異なっており、そしてとても神妙な口調だった。

何か変なことでも言ってしまっただろうかと思い私はバレットの方に目をやると

彼女は先程までの怒った様子はなりを潜めてこれまた信じられないような表情をしていた。

そうして無線機から一言


『今は2132年11月の2日だ。』

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2024年12月3日 18:00

魔法少女ですが、誰か私の事を知りませんか? @mirrorKaine

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