あいあむタイムトラベラー?
今現在、私はバレットさんと共にオペレーターさんが手配した車に揺られていた。
そして当の本人は横で私の肩を借りてスヤスヤと眠っている……なぜこうなってしまった?
遡ること30分前
§
『今は2132年11月の2日だ。』
「……つまり私は約100年タイムスリップしてきたと?」
私のまず最初の反応はこれだった。
それもそうだろう、だって私は感覚的には先程まで魔獣と戦っていたはずなのだから。
魔獣の特殊な能力により別の県に飛ばされた、などと言われる方がまだ現実的だ。
『あぁ、君の言っている事が本当であるならば、の話ではあるがね。』
「本当も何も、私目線からでも信じられませんよ。 恐らくは魔獣の能力だとしても、タイムスリップなんか。」
今無線機の奥から喋っているのは多分、オペレーターさんが言っていたお偉いさんとやらなのだろう。
にしてもだ、こんな状況にいざ自分が置かれてみるとなるとやはりドッキリを疑いたくなるように信じきれないのが私のさがだろう。
そうやってぼんやりと思考を続けているとようやく先程のフリーズ状態からバレットさんが復活した。
「ちょっと待ちなさ、待ってください。
という事はリヴィアさんは100年前の、しかもちょうど「終焉の日」からタイムスリップしてきた魔法少女だって事ですか?」
何故か唐突に敬語擬きの言葉を使うようになったバレットさん。
例え私が100年前から来たとて年齢が100歳プラスされる訳でもなかろうに……もしくは無線機の先に推定お偉いが居るからであろうか?まぁこの際どちらでも構わない。
だがあれだ、少し気になったワードがある。
『先程も言ったが彼女の言うことが真実であるならそうなのだろう。』
「すみません、終焉の日って何でしょうか?」
『そう来たか……ならばそうだ。
たしか君は、100年前に兵庫県で異常な程に強い個体が出現して相打ちとなって死んだ、と言っていたそうだな?』
勿論だ、記憶に新しい。
命令により雑魚魔獣を処理していたら、突然にして空が割れ大地が揺れそれは姿を現したのだ。
見ているだけで感覚に異常を来たし、そのカタチは生ける災害。
一吠えで周りにいた生命は死滅、それは魔獣も例外でなく全てに等しく死を与える破滅そのものでありその躰が動けば風圧は鏖殺の衝撃波となる。
まさに「破滅」を思い起こさせる暴君だった。
「えぇ、確かに理不尽なまでの強さの四足獣型の魔獣に襲われましたね。
目と、足を2本奪い相手が倒れ伏すのを見た後に私もそのまま倒れて、気が付いたらここにいました。」
『……なるほど。
君はあの魔獣相手にそれ程の戦績を残したと、そうなると間違いない。』
どうやら今私が話した内容で正解だったようだ。
よくよく考えて見れば、あれ程の力を持つ魔獣なら私を100年先の世界へ飛ばすことなど容易いだろう。
だがそれを考えるとあの時私が負った怪我も全て治っている、となると私はあの魔獣に自分自身の時間を戻され傷を癒された?
対象を別の時間に送り込む副作用だろうか、不自然な話でしかないが今はそう結論づけるしかないだろう。
それはもちろん私の時間も治せるなら、あの魔獣も自分の時間を巻き戻し治癒する事も可能なものとして、だ。
「なるほど、つまり私はそこでその魔獣を仕留め損ねてあなた達の言う「終焉の日」というのが起こったと。」
だがそれはそれで疑問なのだ、
私の
『倒し損ねた魔獣はどうなったのか、というのが疑問なのだろう?』
「はい、話が早くて助かります。」
『あぁ、だがすまないね。
続きはこちらに来て貰ってからじっくりとする事にしよう。
戻って来たまえ、石原君。』
無線機から「ハイっ!」と応える先程のオペレーターさんの声が聞こえて来た。
あのオペレーターさんは石原さんというのだろう。
こちらも何とも気苦労が絶えなさそうな気配を感じた。
『今戻った、すまないバレット。
そちらに車の手配を頼んだから…リヴィアを車に連れて行ってもらえるか?』
「仕方ないですね、わかりました!」
何も無い今の私では住む場所すらも用意できないだろう、ならば資金の調達も出来ないまま野垂れ死んで行くよりは政府に身を預ける方が余程安全だ。
そうして、瓦礫の山から移動し案内された車に乗り込んで数分。100年後の車は少し浮かんでおりそれ故に揺れがなかった事も加味してどうやら疲れていたのだろう、バレットさんは瞼を閉じて頭を揺らしそのまま私の肩を枕に眠ってしまった。
未来の車に少しだけテンションが上がってしまったことは内緒だ。
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