生存者1名?
「こちらバレット、巨大な魔力反応の中心地にて倒れている少女を発見。
それ以外に生体反応は存在しないのでおそらくこの半径2km圏内にいた人間は消失、及び死亡しているものと考えられます。」
アサルトライフルを抱えた黒髪の少女、
魔獣により破壊されたものだろう独特な破壊痕と恐ろしい程に静まり返った空間。
そしてその中心地点で私は、だいたい高校一年生程の年齢であろううつ伏せに倒れている少女を1人発見した。
どうやら服に点々と血の跡が付着している、これが生体反応の正体だろうか?いや、しかし明らかにそれは死んでいる血の量だ。
そもそも明らかな中心地点で生身の肉体が残っていること自体がおかしい。
とりあえず端的な情報を無線で司令室の職員に伝えた。
『了解、付近に生存者が誰も残っていないのであれば擬態型である可能性が高いので警戒しつつ相手の出方を伺ってください』
あからまさに怪しく罠としか言えないだろうこの光景、だがもし目の前の少女が生きている人間なのなら是非とも救出したい所だ。
目の前の少女は起き上がった後にボーッとした様子でこちらへ視線を向ける。
……、目が合った!
私は咄嗟に銃を構え対象に照準を合わせる。
「貴女は何者?
返答によっては……撃ちます!」
擬態型、それは目視した存在に化け人を襲う魔獣。会話をする事は不可能だがそこそこの知能は有しており、今までに2桁程出現が確認されている。最初の出現では擬態ともう1つの特殊能力によって3人の魔法少女が殉職するという悲劇を起こした悪辣なる存在。
もし私の前にいる少女がそれなら、即刻殺さなければならない。
だが目の前の彼女の返答は驚くべき物だった。
「私は魔法少女リヴィアと申します。
どうやら政府への連絡用のトランシーバーをどこかに落としてしまったようですので貸していただけないでしょうか。」
「…は?」
彼女の回答は私たちと同業らしい。
しかし警戒は緩めない。
そもそもこの破壊跡、そして突如として消えた魔力反応、それら全てが異常なのだ。
そこまで詳しくを知らずともわかる、明らかに面倒事の気配がする。
華の女子高生である私の時間を国はどれだけ食い潰せば満足するのだ、と心の中に少し沸いた怒りを消化して次の行動に移る。
私が取った行動は先程指示を仰いでいたスマホの向こうに居るオペレーターに対しての質問だ。
相手に聞かれないように少し小声で、しかし気は緩めない。
「ねぇ、本当にリヴィアって魔法少女はいるの?」
『……いや、少なくとも公式のリストには存在しないな。
だが先程あった魔力反応は間違いなく魔獣のものであるはずだ。
より高知能なイレギュラータイプの擬態型と考える方が自然だろう。』
「野良の魔法少女って可能性は?
そもそも魔獣はどこに行ったの?」
『いまさっき政府へ連絡するためのトランシーバーを無くした、と言っていただろう。つまり前者の可能性はなし。
魔獣に関しても撃破されればこっちでも把握のしようがあるのはバレットも知っているはずだ。
撃っても良い、許可する。』
その言葉を聞いて私はすぐさまに銃を発砲した。
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