魔法少女ですが、誰か私の事を知りませんか?

@mirrorKaine

目覚めとスタート


……


「…ん、んぁ?」


妙に体が痛い、随分と寝心地の悪いベッドだ。

うつ伏せになって瞼を閉じている自分を認識し、そして自分がゴツゴツとした硬いものの上で寝転がっていることに気が付いた。

私は杜氏とじ 真次さねつぐ

28歳 の平々凡々、鳴かず飛ばずのリーマンのはずだ。

いや、違う、?

何か混ざっている。私は……確か誕生日の帰り道に車に轢かれ、いや違う。

私は魔法少女リヴィアで突如乱入してきた魔獣との戦いで相打ちになって……?

あぁクソ、分からない。

それにこれはだ?

そんな事を考えていると私の閉じている瞼に光が差し込んで来る。

そして私は再認識した。

そうだ、ここはベッドでもなんでも無い。

そして確かにどちらの私も死んだはずなのだ。

私は重い瞼を開いて周囲を確認する、まず初めに分かったのは私が砕けてバラバラになったコンクリートの上で眠っていた事。

そしてその砕け方は明らかに普通の砕け方では無く何か精巧な機械で均等に砕いたような、例えるならミステリーサークルのよう、とても言うのだろうか、少なくとも自然な破壊跡ではなかった事。

やはり魔獣とやりあった痕跡に間違いなかった。


埃のような、土臭いような、パラパラと砕けたコンクリートと土埃の匂い、独特な鉄臭さが私の嗅覚を刺激する。


今この瞬間にも私の脳内には大量の疑問が提示されている。


だが少なくともわかった事も存在する、それは私が今は女だと言うことだ。

目覚めとともに恐らくは前世の私である杜氏であった頃の記憶と今現在の私、形無かたなし あおいの記憶が混ざり合い少し混乱してしまったが、確かに私は形無 葵のはずだ。


疑問は尽きぬがとりあえず土埃にまみれた体を起こして、立って周囲を見渡そうとするが


「っ、何か動きづらいな…」


思うように体を持ち上げることができず、少し力を入れる事でようやく起き上がることが出来た、だが体を起こす際にパリパリ、と乾燥した何かが私の体から剥がれていく音がした。


「なんの音?」


起き上がった自分の体を見ると、服は赤黒く染まり乾いた血液がそこかしこに付着している。


「ひぇっ、」


おそらくはこの血液が私と地面とを軽く糊付けしていたせいで起き上がりづらかったのだろう。

異常な破壊跡と私の体や服の複数箇所に付着している血痕、それら全てのなんとも言えぬような気持ち悪さに私は眩暈を覚えた。

この状況を見ると確かに私は魔獣と相打ちになって死んだ、そのはずだ。

私は思い出したかのようにポケットの辺りをまさぐりつつも自身の体を確認する。


しかし不思議な事に幾ら自分の体を触ってみても目視出来るようなすり傷どころか、文字通り傷1つ私の体には存在しなかったのだ。

そして政府への連絡用の小型トランシーバーは私の服や体のどこにも見当たらなかった。

分からないこと、疑問は減ること無く増え続けている。

何より前世と思われる記憶が私の中に唐突に生えてきたことだ、本当に意味がわからない。


他に分かったことと言えば周囲も家屋や建物は崩壊しており瓦礫の山と化していること、そしてその崩壊の地点の中心地がどうやら私の倒れていた場所である、ということくらいだろう。


「本当に……どういうこと?」


焦りか緊張か、それともその両方なのだろうか私と瓦礫しか存在せず風切り音だけが聞こえる世界に対して私は独り言を言っていないと落ち着いて居られなくなっていく。

そうでもしないとこの状況をより実感してしまい気が狂ってしまいそうだったのだ。

しかしそんな中、私は確かにザリザリと瓦礫を踏み分けながらこちらへと向かってくる足音を聞いた。


少し遠くにいて見づらくはあるものの、それでも確かにそれは人だった。

アサルトライフルの類いだろう物を抱える高校生中期程の少女、その年齢に似つかわしくい険しい表情と黒い瞳、そして長く伸びたその黒髪はカラスの濡れた羽のように美しい。

そして彼女はこちらへと語りかける。


「貴方は何者?」



この出会いは私という存在の開始地点でもあり、私というストーリーの終わりまでのタイマーも、確かにそれと同時にスタートされた。

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