第27話 教会に住めなくて困ってます(前編)
アリアタウンにあるごくごく普通の小さな教会に、一通の手紙が届いた。
手紙の送り主は教会本部所属の神官シャルルで、その手紙の内容は「聖女様をアリアタウンに置いてきてしまったので、あとのお世話をよろしく」…とのこと。
こうしてこの教会に住む老神父とその孫娘であるシスターは、この教会に聖女セラを呼んだのだが……
「ようこそおいでくださいました、聖女様。この教会で神父を務めさせていただいている、カルロと申しますじゃ。で、こっちは孫の…」
「お初にお目にかかります。シスターのソフィアです」
「それでは聖女様…」
「どうぞ教会の中へ」
カルロとソフィアがセラを教会の中へと招き入れようとしているが、セラの足は教会の前で止まったままである。
「どうしたんですか?セラちゃん」
付き添いで一緒に来ていたユヅキがセラに尋ねる。
するとセラは、体をがたがたと震えさせながら、その質問に答えた。
「教会、怖い。光属性に満ちている」
「あー……」
ユヅキは一瞬で納得した。
「ちなみに、どのあたりが光属性なんですか?」
「建物の壁が真っ白。中のほうには、女神像とか、十字架とか、銀製っぽいものが色々見える」
「セラちゃん、悪魔か吸血鬼なんですか?」
「違う。ただの闇の使徒」
ただの闇の使徒っていったい何なんだろう?
むしろ、悪魔か吸血鬼とでも言ってくれたほうがわかりやすいのに…と思ったユヅキであった。
「あ…あのー、聖女様、何かこの教会に、お気に召さない点でも…」
いつまでたってもセラが教会の中に入ってこないため、ソフィアはセラにそう尋ねた。
すると、当然のごとくセラはこう答える。
「光属性は嫌。もっと闇に満ちた所がいい」
闇? 聖女なのに?…と、カルロとソフィアは思ったが、相手は最も神に愛されし存在と言われる聖女であるため、二人ともその思いは言葉にせず飲み込んだようだ。
ともかく、ごくごく普通の教会は基本光属性的な場所であるため、光を嫌うセラは住んでくれない模様。
だがしかし、教会本部所属のシャルルからセラの世話を任されている以上、二人は何としてもこの教会にセラを招き入れなければならない。
「おじいちゃん、どうしましょう?」
「うーむ、困ったのう……」
カルロとソフィアは、もはやどうすればいいのかがわからず、ただひたすらに困った顔をしている。
だがそんな二人に、助け舟となる声が…
「大丈夫ですよ、カルロさん、ソフィアさん」
「えっ?」
「大丈夫って、本当ですか?勇者様」
「はい。だってこの町はアリアタウンじゃないですか。何か困ったときは、このセラちゃんが師と仰ぐ存在、伝説の大魔女アリアお姉様に相談すれば、万事解決なはずです!」
こうして今日もまたアリアは、わりとしょうもない面倒ごとに巻き込まれることになるのであった。
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