第23話 メスオーガが色気づいて困ってます(その1)

 アリアたちが洞窟から魔女の館へと戻ってきてからしばらくして、リッカもここへとやって来た。

 そしてリッカは大きな声でアリアたちに告げる。


「あたしは重くない!」


 アリアとユヅキは、自分たちより身長が高くて筋肉質なリッカは、非力な自分たちでは運べない…ということでリッカのことを重いと言っただけなのだが、リッカはずいぶんとそれを気にしていた模様。


「はぁ……」

「はい……」


 だがアリアとユヅキにとってはそんなことものすごくどうでもいいことなため、さらっと流されてしまった。

 しかし、重いと言われたことを気にしていたリッカとしては、二人のこの態度がものすごく気に食わない模様。


「おい、何だその気の抜けた返事は! 他に何かもっと言うことあるだろっ!」

「……特にありませんわ」

「そうですよね」


 本当にアリアとユヅキにとっては心底どうでもいいことなようである。

 その結果…


「いいよな、お前たちは細くて……」


 情緒不安定となっていたリッカがいじけてしまった模様。

 しかしそんなリッカに対してアリアとユヅキは何の反応も示さない。

 なぜなら二人は、リッカに絡むと厄介なことになる…と、身をもって知っているからである。


 ただ、この厄介な剣聖リッカのことをよく知らない人間が、ここに一人いた。

 ちょっと前まで苦い秘薬の味に苦しんでいた少女、聖女のセラである。


「剣士の人、どうしたの?」


 リッカの厄介さをよく知らないセラは、なんか変な人がいる、面白そう…と思って、ついついリッカに声をかけてしまった模様。

 すると…


「ああっ、あたしの話を聞いてくれるのか、幼女ちゃん!」

「セラ、幼女じゃない。セラ、闇の使徒」


 闇の使徒かどうかはともかく、さすがにセラは幼女というような年齢ではない。

 もっとも容姿や口調は、実年齢よりもかなり幼いのだが。


「それじゃあ聞いてくれ、闇の幼女ちゃん」

「だから幼女じゃ…」

「このあたしが、なぜあんな所にいたのかという話を。それは……」


 こうしてセラも気づいてしまった。

 この人はまともに話の通じない、とても厄介な人であるということに。

 そこでセラはそそくさと、リッカの元から逃げ出そうとした…が……


「まだ話は終わってないよ、闇の幼女ちゃん」

「あう…」


 セラ、自分の身の上話を語りたいリッカに捕まってしまう。


「し…師匠、ユヅキ…助け…」

「だぁかぁらぁ、まだ話は終わってないって」

「ううっ……」


 こうしてセラは、これからリッカのどうでもいい話をくどくどと聞かされることになるのであった。

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