第27話

「どうしようーーー!! どうなんだろーーー!! どないしよう!! このままじゃ、空間変異者によって、空間変異が起きてしまう?!」


 俺はアホになった。

 それも完璧に……。


 このまま走り回っても、異能の力が使えないのなら、普通の無職阿呆だ。


「いかーん! 匡助くん! 早くテロリストを倒さないと空間変異者者によって、空間が膨張破裂してしまうぞ! 空間が膨張破裂するというのは、そのままの意味で、空間の中に別の空間を強引に入れてしまって、空間そのもの。この場合は会場だな。が、破裂してしまうんだ!!」

「へ? え? なん? 別の空間を入れてしまう?」

「そうなんだ。さっきから、ほら。潮風の匂いがするだろう。きっと、アトランティスの周囲にある海の空間をこの会場へ強引に入れているんだ!」


 田中のおっちゃんが、もうダメだと思って、ホールの入り口から俺の傍まで走ってきて説明してきた。


 そこへ恵美ちゃんが割って入った。


「あ、ねえ。それじゃ、それじゃ、海から海水を注入した方が良くない?」

「いや、そこまでの力はないんだと思う。海水を注入するとしたら、何万トンという重さに耐える異能の力が必要だからだ」


 俺は考える。 

 どう考えても、俺自身の異能の力を回復しないと話にならない。

 けれども、体力の回復までまだ時間がかかってしまう。


 と、その時。


 こーの。

 一大事に!!

 俺のスマホが鳴ってしまったー!

 スマホに出ると。


 今度はママだった……。


「匡助! 共子と早く帰ってきなさい! もうこんな時間でしょ。門限なんてないけど、早く帰ってきなさい! じゃないと、夕食どうするの! 早く魚を買ってきなさい!! ぬっころすわよ!!」

「え、ママ? 今、日本だと何時?? 魚はここの周辺にたくさんあると思うんだけど……」

「何時? もう夜の8時よ! 父さん。お腹空いてこのままじゃ、腹の空きすぎで、お腹痛いから病院行くとか言いだして」

「うん? 病院? 治療? 体力の回復?」

「え? 何て言ったの匡助? もしかして、魚と釣り具を買って疲れちゃったの。もうー、それじゃあ、この際だからタクシー呼んじゃってもいいわよ」

「タクシー……??」


「ああああああーーー!! そうだ!! 異能力者で、恵美ちゃんのファンに治療ができる奴がいたんだ! そいつに体力を回復させてもらって、会場外からタクシーで帰ろうとするテロリストを見つけるんだ!! 空間が膨張破裂するほどの空間変異を使っているテロリストなら、きっと、今頃はへとへとに疲れてしまって、遠くのタクシー乗り場を探しているはずなんだーーー!」

「匡助? ひょっとして、待合室で漫画読んでるの?」 

「ママ! サンキュー! これで解決したぞ!」

「え、ええええ? 匡助……とうとう、漫画家でも目指すの? 無職じゃなくなったの? そうよね! そうなんでしょ! 母さん希望持つわ!」


 スマホを切って、ズボンの後ろポケットに入れると、俺は治療ができる異能力者の恵美ちゃんのファンを探した。

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スターライドアイドル 主道 学 @etoo

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