第12話

「しっかし、すっごく甘ったるい香りだなあー。でも、いい匂いじゃない。なんだか鼻をつまみたくなるような臭いだぞ。って!! 臭いというのにクンクンとまんべんなく嗅いでしまったぞー! 鼻が折れる! 曲がる!! 捩れるーーー!!」 


「Who are you! ! Where did it come from? ?」

(なんだ貴様は!! どこから入った??)


 鼻を抑えている俺の前に、突然、会場の外で見た奴らと同じ、覆面マスクの男が現れた。 


 手にはサブマシンガンを持ち、どうやら、右端の通路から音もなく走って来たようだ。覆面マスクの履くブーツは、歩く際に音がしないのだろうか?


「ぎにゃあ! 英語ー?! さっぱりわかりませんーーー!」

「This guy? What are you talking about?」

(こいつ? 何を言ってるんだ?)


 覆面マスクの男は、サブマシンガンの銃口を俺に向けて、少し早口をした。


「Don't resist! Come here!」

(抵抗するな! こっちへ来い!)

「はーん? なんとなくわかったぞ! こいつの言ってることが! よし! ここで、勝負だ!! 一対一の勝負をしようって、言ってるんだろ!」


「……What?」

(なんだ?)


「よーしっ! 3分にはまだ余裕あるから。STRとスピードへ……フン!!」


 俺は腕力と足に膨大な異能力を使った。


 瞬間。


 覆面マスクの男の顔に、正拳を喰い込ませて、そのまま向こうの壁にめり込ませた。


「If you resist...」

(抵抗すると……)


「ありゃりゃーん。あなた。身体が壁にめり込んじゃってますよー」


「……」


 覆面マスクの男が、めり込んでいた壁からどっさりと落ちてきて、そのまま動かなくなった。

 

 覆面マスクの男の仲間たちが、こちらの決闘に気が付いて、集まってきてしまった。その足は、走っているというのに、音がしない。そして、何故か甘い香りを嗅いでいるはずなのに、寝ていないではないか?!


「や、やば! 残り時間が?!」

 

 ステータス強化状態の残り時間が、あと20秒しかなかった。

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