第3話

「そういえば、パパから一周間後のイカ釣り船での旅で、釣り具の見積もりを頼まれていたっけ」

「ああ、私も! お兄ちゃん用のいざという時の救命救急道具!!」

「……はい?」

「パパが心肺停止した時に、乾電池で動く心臓マッサージ器があるか見て来いだって」

「パ! パパーーーン!!」


 妹と一階へと降りていくと、玄関にママがいた。


匡助きょうすけ共子きょうこ。ついでに魚も買ってきて」

「はい!」

「はーい!」


 東京世田谷区の一戸建ての家から、外へ出た。

 申し分程度の常緑樹の並木が立っている遊歩道を、妹と歩いて、商店街へ向かう。が、途中。空からマイクが降ってきた。


「うがっ!」

「はりゃ?」


 ボンっと鈍い音がしたかと思うと、気を失う寸前。頭を抑えるよりも。まず、なんで空からマイクが? という当然の疑問の方が早かった。


―――

 

「あれ……どこだ? ここ? 真っ白い空間? あ、ここは病院か……」


 でも、なんか変だぞ。

 真っ白なのは真上だけだ。

 辺りは赤い色に包まれていて。

 

「お兄ちゃん……いつまで、そこにいるの?」

「え? 退院するまでだけど……妹よ。お前は無事だったようだな……フッ、良かったぜ」


「じゃあ! 今すぐに! 入院してきなさい!!」


 っと、妹とは違う声。

 ゴスッ!

 

「はおっ!!」


 今度は腹に強い衝撃を受けて、俺は昏倒しそうになった。


「お兄ちゃん? 良かったね……」

「は?? う……痛い……」

「その人よ」

「え? ひょっとして……声からして……佐・江・島さん??」

「……そう」

「お兄ちゃん! 急にお腹の痛みが治ったぞ! 痛いのどこかへ飛んでったぞ!」


 俺は佐江島さんの真下から立ち上がり、その人の顔を見た。

 そう。そこにいるのは……他でもない。佐江島 萌理さんだった……。

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