欲望

泡沫

第1話

ある日の就寝前、動画を見ていたら、こんな広告が流れてきた。あなたの写真を編集して、理想的な生活を送りましょう!詳しくは概要欄をチェック。概要欄を見てみると、このアプリで写真をダウンロードして編集するとそれが現実でも起きると記載されていた。そんなことあるはずないと分かりながらも、帰宅部で暇している俺は、試しに赤点ギリギリを記念して撮影した物理の解答用紙をダウンロードしてみた。そして、点数の31を白く塗りつぶして100と赤で書いた。うーん、何も起きた気がしない、そりゃそうか。でも少しの期待を覚えながら俺は眠りについた。


翌日、いつもと変わらない朝だった。すぐに着替えて、急いで朝ごはんをかきこみ、家を出て、大急ぎでたくさんの人をかきわけながらチャリを漕ぎ、チャイムの音と共に席に着く。もっと早く学校来いよーという担任の声を聞き流しながら、ホームルーム中、俺はやはり昨日のことばかり考えていた。そのためか、物理のテストを回収するぞーという声だけははっきり聞こえた。みんなのようにガサゴソと物理の解答用紙を出し、前の人に回そうとした。その時だった、ふと見えたテストの点数が100点になっていた。え、と驚きしばらく見ていたら前の席の柴原が気怠そうに解答用紙をひったくった。回収が終わり、いつものように休み時間に入る。すると柴原が後ろを向き、「お前さ、この前の物理満点だったんだろー。物理教えてくれよー。えいやでも俺、、、と言おうとしてもなんと返せば良いかわからない。とりあえず見せられた問題を解こうとしてみる。するといつも何もわからなかった問題が全てわかった。すらすらと問題を教え終わった俺に柴原はありがとなーと言い次の時間の準備を始める。俺は情報の時間なのをいいことにパソコンを開き、例のアプリにログインする。密かに憧れていたバスケ部の集合写真をホームページからアップロードし、自分の写真を加えてみる。そこで満足して突っ伏して寝ていた。チャイムが鳴るのに気づかずに寝続けているとバスケ部の田中が話しかけてきた。おい、起きろよー。てかお前今日は部活ちゃんと来いよー。陽キャにいきなり話しかけられて怖気づくかと思いきや、俺はあーおけおけ。と普通に答える。ちょうど一時間前まで普通に話していた柴原はこちらの大きな声を迷惑そうに見つめていた。


放課後、俺は田中に連れられ部活に向かっていた。そういえば、田中はいつも木村と部活に行っていたはずだ。よくエースだと持ち上げられていた。木村はどうしたのだろう。体育館に着いてみんなが揃うと、先輩が高3はみんないるなー。と言い、部活が始まった。え、と思いながらも、みんなに合わせてアップをし、プレーを始めた。体育の授業ではまともにドリブルすることもできなかったのに、俺はシュートを決めることさえもできた。その時のさすがはエースだなというみんなの声がなにか引っかかった。もしかしてと思い、休み時間に少し抜け出し、教室の物理の成績上位者の張り紙を見てみた。やはり、いつもトップだった上田が乗っていない。少しの罪悪感も感じなかったといえば嘘ではない。それでも今の生活は楽しかった。


それからの俺は暴走した。絵が上手い人に憧れれば、入賞作品をアップロードし名前のところを書き換えたし、好きな女子と付き合っていると噂のやつがいれば、ツーショットをアップロードしそいつの写真を自分の写真に変えた。字がうまい人に憧れれば、、、、頭がいいやつに憧れれば、、、、スポーツテストで賞状をもらった子に憧れれば、、、、、


1ヶ月後、クラスの人数は約半分になっていた。


                  



  


          〜完〜

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欲望 泡沫 @nanatata

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