第4話 友人
「というわけで車を出してくれない。」
友人の真中 琉人に電話をかけていた。まあ、出かけない僕は車を持っていないので仕方ない。
「……はぁ?」
電話越しからそんな声が聞こえた。
「だから、」
「いや、説明が聞きたいんじゃなくて、普通さ、俺に頼むか?」
「えっ?」
だって、頼めそうな知り合いが真中さんしかいないし。
「あっ、いや良いよ。もう、良いよ。後さ、なあ、香織も一緒で良いか?」
「良いけど。」
まだちゃんとうまくいっているのか、知り合った頃は、終わりそうな雰囲気があったのに、よく耐えたものだ。はぁ、まあうん、
「電話で言うもんでもないけどさ、俺たちさ……」
……ああ、そうか、まあありえない年齢ではないか。それに人はいつ死ぬか分からないしな。
「……まあ気を使わないで。」
まあ、幸せが一番だ。
「そうか、俺た……ちょっと、待って」
あっ、電話が恐らく奪い取られたのだろう。声が変わった。
「もしもし、私たち結婚するんだ。」
香織さんの声が電話から響いた。
「……おめでとうございます、絶対に別れると思ってました。」
「デリカシーないね。まあ、君たちのおかげかな。」
「それは、どうも。」
「というわけで、小雪ちゃんにも報告しないとだから。」
「そうですか。まあ、そうですね。喜ぶと思いますよ。」
小雪は喜ぶだろう。喜ぶ小雪を見たかった。
「だから、私も行くからね。じゃあ、バイバイ。」
「では、」
まあ、知らない男一人追加より、知らない女性も一人追加のほうが、小雪の妹も気楽だろう。
「ちょっと、待って。俺はもう一個聞きたいことがある、その小雪さんの妹って、そんなに顔が似てるのか?」
「まあ、似てる顔は」
「……大丈夫か?」
大丈夫ではある。初めは怒りとか沸いていたが、まあ彼女も姉を失って悲しみや様々な変化のせいで苦しんでいるから、まあ大丈夫だ。
「大丈夫だけど。」
「それなら良いけど。それとさ、前からずっと思ってるけど。俺年上だよ。」
真中 琉人、22歳で生きていたら小雪と同級生であり、年上優しさとダメさを両立する人間。
「……いや、だって」
「100歩譲って俺にため口は許す。でも、何で、香織には敬語なんだよ。あいつ俺と同じ22歳だぞ。」
いや、まあ尊敬できる度合いが違うというか、何というか、無意識というか……
「ああ、用事が。車お願いします。では、失礼します」
電話を切ろう。ややこしくなりそうなので電話を切った。後で謝ろう。
そんな電話を切った所で幼馴染の妹が部屋に入ってきて真っ青な顔をしていた。
「お兄ちゃん、今帰りました……騙されたらダメです。」
「……何が?」
「架空請求ですか?電話してるなんて、もう切ったんですか?払ったんですか?」
この人は、僕のことを何だと思ってるんだ。……まあ、こう言う所は素で姉妹で似ているのかも知れない。
「……友達だけど、車頼んでたんだけど。何?」
「本当に友達いたんだお兄ちゃん。」
一瞬、追い出そうかと思った。
死んだ幼馴染の妹と…… 岡 あこ @dennki
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