第2話 真面目な話

幼馴染の妹は、テキパキと片づけをしていた。特段潔癖でも無かったので、死ぬほどキレイでは無かったが、それなりだったので片づけはすぐに終わり、彼女は荷物を空いている部屋に運び込んでいた。


それから神妙な顔で正座して、僕の近くに座った。

「お兄ちゃん、その」


「……君、そう言うキャラではないですよね。なんか……気持ち悪いです」

まるで、姉の小雪の真似をしているようでとまでは言えなかった。まあ、その結果もっと酷いことを言ってしまったみたいだ。小雪は、幼馴染に似ている顔で、彼女の真似をしないでほしい。我ながら最低だと思う。


「ごめん。お兄ちゃん。」


「……それで、何か用事ですか?部屋なら空いている部屋を勝手に使ってください。」


「……違くて、私そのお金とか持ってなくて、最低限の衣服とか生活用品とかしか持ってないから。でもお兄ちゃんも……」


「お金はあるよ。」

図々しく、ここまでやってきてお金の事を気にする彼女の精神構造は不明だが、まあ少しまっとうで驚いた。


幼馴染の妹は少し固まって、それから声を荒げた。

「……ダメです。今すぐ、やめてください。お姉ちゃんが死んだからってそんな自暴自棄になって」


……ああ、なるほど。

「何を言ってるんですか?別に違法行為とかしてませんし。ただ、宝くじを当てただけなので。と言っても、まあ、ある意味で形見みたいなものだったんですけど。」

お金はあった。お金だけはあった。小雪が最後に買ってきてと言った宝くじが大当たりしていた。そんなところで運を使ってほしくなかった。……使わないのも手だったが、『これで君は大金持ちだよ。』そう言って手渡してきたので、生活費などとして使うことにした。


「……」


「だから、まあ少しぐらいなら気にしないで下さい。」

まあ、妹の食費になるのは、幼馴染的にはOKだろう。


「……ありがとうございます。お兄ちゃん。それで、何か反応が薄いよね、お兄ちゃん。」


「そうですか?話が終わったなら、何処か行ってください」

まあ、彼女を追い出す気も無かったが、別に関わる気も無かった。小雪の偽物を見ているみたいで、なんとも形容しがたい感情が浮かび上がってきた。


「……ねえ、お兄ちゃん。私大学生になったんだ。」


「大学生で家出ですか?まあ、大丈夫ですよ、下には下がいるので、僕みたいな人間が」

そうか、大学生に……。


「暗いよ。お兄ちゃん。そんなんだったら……」


彼女の言葉に思わず叫んでいた。

「そんなんだったら、お姉ちゃんが泣くよとか言いたいんですか?だったら、言っておいてください、泣きたいのはこっちだよって。」

はぁ、もう、ダメだ。


「……ちがっ、ごめん。お兄ちゃん。」


「……いえ、大丈夫です。こちらも、大人げ……子供でした。まあ、寝泊りと食事は用意してあげるので、それ以外は勝手にしてください」


「……」

幼馴染の妹は、下を向きながら何処かに去っていった。

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