第11話
全く新しい一日が始まった。嬉しいことばかりでもうこれ以上何事にも喜べない気がする。やっと夢が叶った。しかしこれが終わりではない。むしろ始まったんだ。これから先輩と毎日一緒に帰って、いっぱいお出かけして、いっぱい話して。前とやることは同じかもしれないが、一緒に幸せになれたら。それだけでいい。ちゃちゃっと授業を済まして早歩きで生徒会室へ向かう。そろそろもうこの行動に飽きてくる。それでも先輩に会うのは楽しみだ。取っ手に手をかけて開けようとするがやはり止まってしまう。少し気まずい。この少しの気まずさでさえも私の行動を止める。私は変わるんだ。少しの勢いでドアを開ける。まだ将輝先輩しかいないようだ。
「あ、彩さん。合いたかったよ」
目を見張るほどストレートに気持ちを伝えてくれるところに驚く。純粋な笑顔でこちらを向いた。どれも嬉しかった。恋が楽しくてたまらない。二人っきりの時間を大切に一秒でも長くするために素早く行動した。
「ところで先輩。いつも私のことさん付けで呼んでますけど、呼び捨てでもいいんですよ?」
「確かに。あんま気にしてなかったな。じゃあ彩、でいいかな」
「なんか、自分で言っておいてあれですけど、恥ずかしいですね」
「なんでよー笑。別に普通だよ?」
日がどんどん落ちていく。楽しい時間ほど経つのが早いのは本当に惜しいことだ。しかし、人生もこうやって過ぎていく。その一部がこんなに幸せなんて、数ヶ月前の私は予想もしていないだろう。常に笑顔が絶えることはなかった。
家の最寄り駅に着いて結宇と出会った。まだ将輝先輩と付き合ったことを報告してなかった。きっと結宇も喜んでくれる。大切な人が二人いて、私は神様に愛されているのかも知れない。
「結宇、あのね、私彼氏できたんだ」
「え?そうなの?好きな人いるとか言ってたっけ」
少し悲しそうに、驚いた顔で尋ねてきた。予想通り伝えるのは緊張する。
「伝えようと思ってたけどちょうど結宇と合わなくて、そうしてたら先輩から告白されたの」
「そうなんだね。ちなみに誰なのー?」
「えっと、将輝先輩」
「あぁ、あの先輩か!お似合いだよー!お幸せにね」
結宇に伝えたらすっきりした。じゃあねと言って別れた。もう明日が待ち遠しいので早く寝よう。葉のない木が風に揺らされて唯一残っていた葉が落ちた。夜ご飯のまだ温かいミネストローネを飲んですぐにお風呂に入った。
次の日結宇は、自殺していた。
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