第10話 恐怖!真夜中の花子

 列車が発車してから約1時間、列車のラウンジはとても賑やかだ。


「時にソウイチ殿、ビアニカを食べる際は丸かじり?それとも皮を剥いて切る派?」


「だから別にビアニカを好き好んでるんじゃないですって」


「あの丸絞りジュースも果物同様慣れない人が口にすれば気絶嘔吐下痢になるんだ。だけど君はすぐに起き上がり、別にどうってことない顔で今も立っている!。君はビアニカに選ばれし人なのだ!」


「いやだから・・・」


「こんなとこに!自動運転だからといって無闇に歩き回らないで下さい車掌!」


「よせ!耳は駄目だ!千切れる!ああ!もう少し優しく!!」


 そういって乗組員に引っ張られていった。その様子を確認し、ソソソっとこちらに戻ってくる人影。


「どうして助けてくれなかったんだ?」


「私ビアニカで散々な目にあったから、あの人無理矢理食べさせてきそうでちょっと・・・」


 そうだった、カエデは一回俺に食わされてそれはそれはひどい目に・・・。


「なんか食べたわけじゃないのに口の中が不味い、ジュース飲もうぜ」


 なんやかんやありもう夜だ。今は部屋のテレビで適当に番組を見ている、今は心霊番組だ。


「やっぱ地球以外でも心霊ってあるんだな」


『地球じゃ非科学的だって言われて賛否両論だけど星素ってのがある以上心霊もれっきとした現象として認められているぜ』


「「そしたら電話がかかってきたんですよ、「お前今どこおるん?」って。「いやどこもなにも今一緒にカラオケしてんじゃん」って、「それ俺じゃねえぞ!?」って友達が言ったので振り返るといたはずの友人がいないんですよ。あとで監視カメラ確認したらね、途中でその人勝手に首がねじれてたんだって」」


 番組のゲストは皆「イヤー!」とか「キャー!」ってリアクション。正直怖かった。


『ビビったか?』


「日本のホラーは物理的じゃねえんだよ、概念的な恐怖でくるから怖いの。海外のは物理でくるからアレは死の恐怖なの。まさか合体でくるとは思わなかったよ、しかもこれ実話でしょ?なおさら怖えわ」


 あー寝る前にとんでもねえもん見てしまった、脳裏に焼き付く前に寝よう。


コンコンコン


 ドアをノックする音がはっきりと聞こえる。今、日付変わったばっかりだ、この時間帯に起きてわざわざ俺の部屋に尋ねる奴は一体・・・。


 意を決心してドアを開けると・・・。


「ごめん、心霊番組見たら想像以上で・・・怖いからトイレ付いてきてください・・・」


「ええ・・・・?」


 そこにいたのは寝巻姿のカエデだった、様子を見る感じ限界の一歩手前って感じだな。ここで漏らされたらかなわんから付いていくことにした。


「俺はここまでしかいけんから後は自力で頑張れ」


「く、暗いぃ・・・」


「その年齢で怖えーからトイレ付いてこいはなかなか見ねえぞ」


「うるさい、あんた私の年齢知らないでしょ!」


「しらんが大体18とかそんくらいだろ?」


「・・・・・・」


 反応がないってことはまさか一発正解!?。まぁ女性に年齢聞くのは失礼っていうしこんくらいにしとこう。


~10分後~


「まだかー?大でもちょっとおせーぞー?」


 返事がない、変だな、だが俺はこれ以上進むことができない何故なら!ここからさきは女子トイレ、入れば即刻逮捕案件だ、なんなら長時間近くに立ってるのもダメな気がする。


 そうしてるうちにカエデが小走りで帰って来た。


「なんか、なんか!。女の子の声がする・・・!」


「落ち着け、いったん深呼吸だ。スーハ―、ス―――ハ――」


「フ――――、やっぱりお化けは駄目、下手すると命とられる、付いてこさせといてなんだけど早く部屋にもどろ・・・」


「・・・・アソビマショ?・・・・」


 気のせいかな、誰もいないはずのトイレから女の子の声が聞こえてきた気がするんだが。


 トイレからドアの閉まる音と、コッコッコという音が聞こえてきて段々近づいてくる。


「・・・・・・!!」


 カエデの方を見るともはや恐怖で声が出てない。これは不味いな、こっちの心霊はスプラッター×概念的恐怖の応酬だ。


「こい・・・くるならこい・・・」


「なにしてるの!?早く逃げよう!?」


 やばい体が勝手にファイティングポーズを取ってる、これじゃホラー映画で序盤に死ぬやつじゃねえか。


 足音がさらに近づいてくる、もうやるしかねぇ!


「アタシトイッショニ・・・・アソボォォォォォ!!!!!!」


 ギアの入った幽霊が物凄い速度で襲い掛かってくる、俺はそいつに左のフックを入れてから右のアッパーカットでKO勝利した。


「ガ・・・・ベベ・・・・」


「・・・・死んだの?」


「気絶だ、まさか幽霊に物理攻撃が効くとは思わなかった」


『向こうもスプラッターなやり方でくるから必然的に実体化せざるを得ないんだよ、その点で言えばジャパニーズホラーというやつは恐ろしいな』


 気絶してた幽霊が目を覚まし飛び起きる。


「・・・・まだやるかい!?」


「ソウイチ!もっかい!」


「・・・・・アイテガワルカッタデス、ユルシテクダサイ・・・」


 カタコトでそう言うとソイツは急にフッと消えた。


「・・・・部屋戻ろう」


「だな」


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