第11話 途中停車駅「ルテン・北」
「眠い・・・・」
「大丈夫?なんかクマが凄いけど・・・」
「昨日のトイレのせいだよ、すっかり目が覚めてあれから全然寝れなかったんだぞ?。もうトイレは付いていかんからな」
「す、スミマセン・・・」
「やばい・・・眠い。今から少し寝てくる」
そう言ってソウイチは自室に戻って行った。昨晩のトイレの後、私は「幽霊は物理攻撃で撃退できる」を知りスッキリとした気分で寝ることができた。
「私も部屋に戻るか・・・」
部屋に戻っても特にやることがなかったので久しぶりに武器の手入れをしよう。この列車は武器の持ち込みは基本OK、にもかかわらず列車での事件はいまだゼロ。
「思えばあんたとも長い付き合いね」
私がこのレイピアを使い続けて3年、定期的にメンテナンスに出したりこまめに手入れしたりして可愛がってきた。親友と言っても過言ではない。
よくよく考えてみると私はいまだに自分の力についてよくわかってない。そもそも記憶は3年前より以前は空っぽだし、この星の住民なのかも怪しい。
でも体はこの力の使い方を覚えている、小さなそよ風から周囲を吹き飛ばす豪風まで起こすことができる。
それでも一度あいつに負けた、とんでもない手だったけど惨敗。あの果物の味は忘れない、いや忘れさせてくれない。
「・・・・・テレビでもみて切り替えよう」
今は「幽霊を負かす!?オロチ先生の対幽霊護身術!」っていう番組がやってる。
「「幽霊ってのは基本まっすぐ直線にしか突っ込んできません、くる場所が分かればそこに置きパンチ、これで相手はひるみます。ひるんだ隙に腹、足、股間、脇腹、頭頂部をボッコボコにしちゃいましょう。これで100勝てます」」
「「では実戦と行きましょうか。ここは「出る」と噂の廃墟です、さぁ私が相手だ!幽霊ども!かかってこい!!ぐああ・・・・!!」」
映像が乱れ、綺麗な山の景色が映る動画に切り替わった。
「・・・朝にやってる番組なのに事故るとは思ってなかった」
チャンネルを切り替える。
「「2秒クッキングチャレンジ!!」」
「「おはようございます、銀河中の皆さん!今週もやってまいりました2秒クッキングチャレンジ!前回出た新記録2.76秒を超えることができるのか!?」」
「なにこれ面白そう・・・!」
「「このチャレンジはあらかじめ作る料理を決め、そのレシピ種目でいかに速く作れるかがミソだ」」
「「前回の「サラマンダーマッハチーム」が出した新記録を打ち破れるのか!?今回挑戦する「タキシオン・ファイターズ」のラドーさん、今回の挑戦に対する意気込みは!?」」
「「2秒とか正直ぬるいんで、俺たちが1秒の世界に飛ばすんで、そこんとこよろしく」」
これは盛り上がって来たぞ、まさか朝からこんなに激熱な番組があったなんて。
「「強気なチームだ!嫌いじゃないぜ!じゃあさっそく始まりだぁー-!」」
挑戦が始まる、すると奥から巨大な大砲のようなものが現れる。
「「具材はちゃんとたっぷり入れたか!?激辛餃子は途中の激辛ソースかける過程でいかに速度おとさねえかが大事だぞ!」」
「「よし!発射までのカウントダウン。5・4・3・2・1、発射ァァァァァァァァァ!!!!!」」
大砲にも見劣りしない具材発射装置から放たれた具材は第一工程の皮をスピード落とさずに通過、続いての工程はさっきも言ってた激辛ソースをかける工程・・・ここも大してスピードを落とさずに通過。そして最終工程、焼く過程だ。
とんでもない規模の炎が沸き上がり、その中を通過、その先の的に叩きつけられ完成だ。
「「タイムは・・・・な!?なんと!!2.0秒!!サラマンダーマッハの記録より0.76秒も短縮!!だが1秒台には届かず!いつの日か、2秒の壁を打ち破り!1秒の世界を見せてくれる者がいるはずだ!今回はここまで、ではまた次回!!」」
番組時間10分、爆速で終わった。
「・・・・とんでもない情報量だったわね・・・」
客室がノックされる、朝ごはんが届いた。
「・・・ッ!・・・」
「とても美味しい」と語りかけるかのような輝き、名前が一発で覚えるには難しすぎるという点を覗けば間違いなく今まで出会った中で最強の料理だろう。冷めないうちに食べてしまおう。
「~!」
口に入れた瞬間、固形のモノがふぁ・・・とほぐれ、口全体に馴染む。約4秒、ささやかな甘さと旨味が廻り、後味の一切を残さず消える。今までに感じたことのない味だ。
『乗客の皆様にご連絡です、間もなく途中停車駅「ルテン・北」に止まります。停車時間は25共通時間、その間に停車駅で楽しむもよし。ですが明日の発車時刻09:47までにはお戻りください』
列車は停車し、人がゾロゾロと出ていく。
(せっかくだし私も観光しよ。ソウイチも・・・いや私のせいで寝れてないから寝させてあげよう)
部屋でぐっすり眠っているソウイチをそのままに私は一人日帰り観光をしに列車を出た。数時間後一人で来たのを後悔するとはつゆ知らずに・・・。
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