第9話 大陸横断鉄道「コンティネンタル号」

「俺たちが乗る車両ってここで合ってるよな?」


「あたしがD-07であんたがD-12だからあってる」


 俺たちは今、列車に乗ろうとしている。どういう経緯かすこし説明を。


―――1週間前――――


「北に行こう、考えてもわからんなら一か八かその噂のとこまで行こう」


「え、ちょ・・・ここがこの星のどこか知ってる?北と南の中間だよ?北ってもう最果てよ?」


「ああ、行こう。ここでウジウジ考えてるよりかはマシだ」


「まぁそうだけど・・・計画は?」


「さっき思いついたばかりだからまだ無い。今から一緒に考えよう」


 最初はあまり乗り気じゃなかったカエデも徐々にやる気になってきたようで、店の人につまみ出されるまで続いた。


「よし、さっそく準備しに行くぞ」


「防寒着は必須だね」


 どうやらこの星には地球と同じく列車が走っていると、そしてその列車の線路は北の都市にも続いている。俺たちは北への準備を済ませ、なんやかんや北の都市行きのチケットを手に入れ、今に至るわけだ。


「でも運がよかったよな、丁度クリスさんが2枚持ってた「コンティネンタル号:北の都市ノースへルディア駅行きチケットを譲ってくれて」


「「なんかくじ引きで偶然当てちゃって、俺は警備隊長だから行くわけにもいかんしな、せっかくだし2枚やるよ」ってほんまについてると思った」


「「まもなく、3番ホームにノースへルディア行き車両がまいります、危険ですのでラインの内側までお下がりください」」


 奥から来た列車の外見は機関車と新幹線を組み合わせたような見た目の列車が駅のホームに止まった。


「迫力すげえな・・・っていうかデカ」


「部屋付いてる車両もあるし当然でしょ?あなた列車初めて?」


「俺の故郷にも似たような奴はあるけど・・・全然違うぜこれは」


 俺たちは列車に乗る、この列車は部屋付ってあるけど部屋だけじゃなくてラウンジまであるのかよ、詰め込みすぎだろ。


 中の内装は程よく豪華だ、行き過ぎた豪華じゃなくて最低限の豪華だ、この絶妙な塩梅で内装を飾るのはとても難しい、素人でもわかる。


「なんかこの車両・・・風を感じる」


「そりゃ空調あるしな」


「違うそういう風じゃなくて、もっとこうなんか概念というか・・・」


「お、ドリンクバーあるぞ、「好きにお飲み下さい」だってよ、ではさっそく」


「待って何のドリンクか見ないと・・・」


 コップを手に取りドリンクを注ぐ、ダークブルー色の飲み物を豪快に注ぎ飲む。


「ぷはー・・・グフ・・・」


「そ、ソウイチ!?一体何飲んだの!?」


「チクショウ・・・これハズレだ・・・」


 私たちの様子を見て慌てて乗組員らしき人が駆けつけてきた。


「どうなさいました!?」


「友人が・・・青黒い飲み物を飲んだら倒れて・・・」


「青黒い飲み物?・・・まさか・・!」


 ハッとしたような顔で叫ぶ。


「車掌!!テメェまたドリンクバーの飲み物勝手にビアニカジュースに変えやがったな!!」


 その顔からは想像もつかないような形相で叫ぶ。


「・・・やはりビアニカだったか・・・不意をつかれ・・・た」


「目を覚ましてソウイチ!ビアニカ食べても嘔吐どころかお腹すら下さなかったんだから大丈夫よ!」


「不意打ちは無理ぃ・・・・、暫くここで寝る」


 奥の扉から車掌らしき人物がやってくる。


「何々どうしたの?一体なにg・・・」


「これで何度目だ?ア゛ア゛!?いたずら感覚で劇薬混ぜてんじゃねえぞ!!」


「ごめんごめん落ち着いて一旦、ね?」


「これで47回目だぞ・・・・そろそろ死人が出るぞ?そうなる前に死にたくなかったら金輪際やるんじゃねえぞ!分かったかゴラァ゛!!」


 私は今、結構珍しい場面に直面している。あんなにガチギレしている人は見たことないし、あんなにキレられている車掌、いや彼からしたら上司なのかもしれない。


「あのそんなに怒らなくても・・・」


「知ってますか?ビアニカって現地の人からは珍味とかなんとか言われてるけど、耐性無い人が一個丸々食べちゃうと最悪死ぬかもしれない果物なんですよ!?、そんな劇物の丸絞りジュースなんて飲んだらもう・・・」


「あそこの飲んでしまった方もあと2日は目を覚まさないでしょう」


「さすがに不意打ちビアニカは殺意が高いな、相変わらずとんでもない味してやがる」


 スッと起き上がったソウイチを見て乗組員が言葉を失う。


「これ他の人が飲んじゃうと最悪死んじゃうから変えてもらっていいですか?」


「・・・・幽霊?」


「違う、生の人間」


「吐き気を催したりは・・・」


「味がとんでもないだけで別にどうってことないぞ」


 約10秒、ある者は驚きのあまり声を出すことを忘れ、またある者は自分以外に特製ビアニカ丸絞りジュースを飲めるものがいることを知り言葉を失う。そしてその空気的に喋りづらい追い風女子。


「・・・とりあず、もう勝手に飲み物を変えるのはやめて下さい、言ってくれたらちゃんと専用コーナー出しますから。分かったら運転室に戻って、あと20分で発車しないといかんのですから」


「・・・はい・・・」


「大変申し訳ございませんでした!。この埋め合わせは必ず!」


「大丈夫っすよ、むしろ俺が飲んでてよかったまである」


「本当に無事でよかった・・・・!!」


 なんやかんやあり、俺たちはそれぞれの部屋で発車までの時間を過ごした。俺はルームサービスでもらった特製バンバジリジュースで体を癒し、ベットで転がっていた。 


「「まもなく大陸横断鉄道「コンティネンタル号」ノースへルディア駅行き、発車します。お客様は発車してから列車速度が安定するまで客室から出ないようお願い申し上げます。それでは北への旅をお楽しみください」」


 一週間の旅、楽しむとするか。

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