第5話 謝罪と五体投地
「この度は、大変申し訳ございませんでした!」
今、俺はこの町の交番みたいな場所にいる。あの後は誤解も解けずに警備隊の人に連れてかれて・・・・ああ思い出したくない、やってないのにやったていで話が進む、地獄だった。心優しい住民の証言もあってなんとか解放されたがもうこんなのはごめんだ。
それで今は当の本人に全力で謝罪中だ。
「えっと・・・、顔上げて下さい。元はと言えば私が早とちりしたせいですし」
なんて優しいんだ、まるで神。
『にしてもアレはちょっと引いたわ~』
レミニがなにか言ってるが心の中で中指を立てて無視する。
「勘違いをしてすいません、そして悪人をやっつけていただき、ありがとうございます」
感謝されてしまった、どうしよう、俺こんな子にクソまずい果物無理矢理口にねじ込んだのか、最低やな。
「ウプ・・・・・すこしトイレにいってもいいですか?」
彼女の顔から血の気が引いていく、吐く一歩前のようだ。
「ああ、早く行った方がいい」
彼女は口元に手を当てながらトイレがあると思われる方向に走って行った。
「・・・あの果物って毒なのか?・・・・」
「毒ではない、だが胃が弱い者が食べると下痢か嘔吐の原因になる、それでなくても味は最悪だがな。だが世の中にはそれを好んで食べるものもいるんだ」
「へー、そうなんすね・・・」
しまった、気づかないうちに知らない人に喋りかけてしまった。
「初めまして、私は隣のサドラの町の警備隊隊長、クリス・レガルスタだ。君の名前は?」
「仲月宗一、ソウイチでいいぞ」
隣町の警備隊長か・・・なぜこんなとこに。
「話は聞いたよ、君がヘッドを倒した男だと」
「いや、まぁそうですけど・・・・」
「そして抵抗する女の子に無理矢理ゲテモノを食べさせた変質者であることも」
「違うんです」
いや、内容はあってるんだが、言い方がおかしい。
「冗談だ、相手は
よかった、誤解はされてない。
「彼女を知ってるのか?」
「ああ、彼女の名前はカエデ・ルリリア、以前町の防衛に力を貸してくれてね、おかげで町を守ることができたんだ」
「へぇー」
(日本人みたいな名前だな)
『宇宙は広いんだ、和風に感じる名前があって当然だ』
(世界は広いな、これからが楽しみだ)
隊長さんが時計を見て。
「ああ、すまない。そろそろ昼休憩が終わりそうだから帰るよ」
そう言い、駆け足で去って行った。
「なあレミニ」
『なんだ?』
「星縦者ってどういう原理で誕生するんだ?」
『まだわからない、前言ったように星素は自由なエネルギーだから何が起きても不思議じゃない』
そうこうしているとトイレからカエデが戻って来た。
「大丈夫だったか?・・・」
心なしかとてもゲッソリしている。
「・・・・あなたとんでもない物を食べさせましたね・・・」
片手でお腹を抑えている。
「ほんとにすまん、この辺に薬局あったらなんか薬あるか聞いてくる」
「・・・・た、頼みます」
もしかしたら宇宙にも新ベオフェルミンLみたいなのがあるかもしれん。
『あの感じ、2日は下痢に悩まされるぞ』
「やめろ、そう言うのは聞こえてなくてもいうもんじゃない」
俺は急ぎ足で薬局を探した。幸いすぐに見つかり、目当ての整腸薬も手に入った。
「あったぞ!どんなに腸が荒れていてもこれ飲めば整うスゲェ薬だ!」
「く、下さい・・・・こんなに酷い腹痛は・・・初めてです・・」
「かなりヤバそうだ、医者に診てもらうか?」
「大丈夫です!!ッツ!・・・その薬を飲めば治ります、特にビアニカが原因の腹痛には効果・・・テキメンデス」
薬の瓶を渡しきる前に恐ろしい速さで瓶を奪取し、右手で腹を抑えながら早歩きでトイレに向かう。
『・・・思ったより深刻な状態だな』
「土下座で許してくれるかな・・・」
『駄目だ、土下座じゃまだ頭が高い』
2時間後。
「待たせちゃった? なんか今日はいい天気だね!」
「・・・カエデ・・・さん?」
「そうだよ? 私がカエデ・ルリリアだよ!」
2時間前のテンションとは真反対、なんか怖い。
「あの・・・この度は大変申し訳ございませんでしたァ!!」
俺はレミニから教わった土下座を超えた謝罪『五体投地』で誠心誠意謝罪した。レミニ曰く、『土下座は座ってから誤ってるから座ってる分頭が高いんだよ』だそう。
五体投地、両手・両膝・額を地面に投げ伏してうつ伏せの状態のこと、土下座より頭が低く、レミニ曰く最上級の謝罪らしい。
今の俺はうつ伏せで地面に突っ伏している状態だ、うつ伏せだからなにも見えないが通行人がクスクスと笑っている、気にするな・・・相手が俺を赦すまで耐えるんだ。
「・・・・とりあえず体を上げて下さい、私も変なテンションになっていて・・・止めるべきでした」
体を起こし、カエデの方を見ると、すごい気まずそうだ。
「・・・・・気分転換にご飯行きましょう」
俺たちは近くにあった飲食店へ行った。
席に座り暫くすると店員が来た。
「ご注文お伺いします」
「えーと・・・『決闘鳥獣のから揚げセット』で」
「『ハイメガパフェ・Ver2.5 期間限定バンバジリ味』でお願いします」
「ご注文承りました」
店員が端末をピッピとしてその場を去った。
「なぁ、決闘鳥獣ってなんだ?」
「知らないの?決闘鳥獣って言われている鳥の種類だよ。決闘鳥獣の筋肉は瞬発性が高いから食べるとすっごいプリプリしてるの」
「へぇー-、そうなんか。そう言えばお前腹壊したばっかなのに食べて大丈夫なのか?」
「だ、大丈夫、訳わかんない物で壊すより美味しい物食べて腹壊す方が10倍マシだから」
やはりまだ根に持ってそうだ。
「お待たせしました、『決闘鳥獣のから揚げセット』と『ハイメガパフェ・Ver2.5期間限定バンバジリ味』です。ごゆっくりどうぞ」
俺の目の前に置かれたソレは今まで見た中で一番の輝きを放つから揚げだった。代々受け継がれし戦士の魂が丸ごと入ってる、そんな風に錯覚してしまうほどのオーラが食べ物で出せるのか!?。
一方、カエデの方は。
「お、大きい・・・。さっそく口の中を極上の甘味で更新しないと・・」
そう言い彼女はそのパフェの上に乗っている果物を口に入れる。
「!? 何これ!? こんな極上の味の果物が存在したなんて・・・」
目を見開き、顔から『美味しい』が溢れんばかりに湧き出ている。
その光景を片目に俺はから揚げを頬張る。
「!?」
次の瞬間、舌を通して脳内に広がる『戦いの記憶』(思い込み)。
「これが・・・戦いの味・・・」
「だ、大丈夫? 正気? おーい」
『嘘だろ・・・から揚げにそんな力が・・・』
「ッハ!・・・・すまん、から揚げに意識を奪われていた」
「そんなから揚げがあるわけないでしょ・・・」
そうして食べ終わり、そろそろ会計をしようとした時。
「次はこの町だな、ヘッドの野郎のスーツを回収するぞ」
外が騒がしい。窓から外を見るとアマ男と似たような見た目の奴らが暴れている。
俺たちは素早くレジで会計を済ませ、外に出た。バーコード決済があってよかった。
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