78 『いってきます』は約束②

「やっぱり番長とお姫様と怪獣なのだ」

「でもそこが、かわいいんですよね?」


 いたずらめいた顔でノアに言われ、アッシュは思わず噴き出した。寂れた教会に笑い声が響く。

 そこにノアとシュヴァリエの声も重なって、子どもたちはいっそうはしゃぎ、リュックから見つけた寝袋や缶詰を持って走り出した。

 その時突然、ハイジの体がふらりと傾いた。アッシュはすぐに手を伸ばし、倒れかけた長身を支える。


「ハイジ、どうしたのだ! 気分でも悪いのだ!?」

「ね"む"い……な、ん"で……」


 聞こえてきた言葉に、ドッと脱力する。


「なんでもクソもないのだ。徹夜したんだから当たり前だし、君は日頃から夜更かしし過ぎ、わわっ!?」


 ところが、ハイジの体が急に重みを増した。見れば、まぶたを閉じて完全に寝入っている。


「えっ。ハイジさん寝ちゃったんですか!?」

「そうなのだ。ノア手伝って! イスまで運ぶのだ」

「わかりました。足持ちます。おっっっも!!」

「がんばるのだー。十センチも浮いてないのだー」


 悪戦苦闘する姿を子どもたちに笑われながら、ゆっくりとハイジを運んでいく。

 仲間に気を取られていたアッシュとノアは、その後ろでシュヴァリエから笑みが消えていったことに気づかなかった。

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