第74話 弟子にしてください


 であればこそ、私はロベルト様の邪魔をするべきではないし、これ以上迷惑をかけるのはいかがなものかという事も理解できる。


 しかし、頭ではそれがベターであると分かっていても心ではロベルト様の為に何か役に立ちたいという衝動が沸き上がってくるのだ。


 この感情は恐らく『ここでロベルト様の為に何か行動を起こせれば過去の罪を払拭できるかもしれない』的な罪滅ぼしからくる感情であり、そしてそれが出来る事こそが今のベストな私の取るべき行動なのだろうが、それが出来る程今の私は強くない。


 その事がロベルト様に対して申し訳ないという感情を新たに生みだし、惨めな気持ちになってくる。


「ロベルト様……っ」


 しかし、ここで傷心に浸っているといつまでたっても今の自分から抜け出せないと思った私は、意を決してロベルト様へ話しかける。


「何だ? スフィア」

「ロベルト様……今までの私の行ってきた数々の無礼、誠に申し訳ございませんでした」

「何の事だ? むしろそれに関しては俺の方が謝罪するべきだろう。すまなかった」

「あ、頭を上げてくださいっ!! ロベルト様の実力からしてかなり前から想像を絶する努力をしてきた事くらいは容易に想像ができますっ!! そして、今までその力を隠して来た事も、その理由も。更に私の為に敢えて道化を演じていた事も……っ。そして、その事に気付いていて今ロベルト様の為に何もできない自分が物凄く恥ずかしくて、惨めで、そして自分が自分を許せないのですっ!!」

「…………全てスフィアの勘違いだ」


 ここでロベルト様が私の為に否定する事は想定内であったので、否定されても気にせずにそのまま喋り続ける。


「ここで私の言った事を肯定する事はできないという事は分かっておりますっ!! なのでこの件に関してはこれ以上私からは何も言いません。 しかしながらだからこそ私は行動でロベルト様に対して謝罪と感謝を示したいのですっ!!」

「いや、別にしなくても良いが?」

「なので、ロベルト様っ!!」

「俺の声は聞こえているのか?」

「私もロベルト様の弟子にしてくださいっ!!」

「断る」

「…………私もロベルト様の弟子にしてくださいっ!! ロベルト様が首を縦に振るまで付きまとう覚悟はできていますっ!!」


 そう言いながら私はロベルト様を力強く見つめるのであった。



◆ロベルトside



「よろしかったでしょうか?」

「よろしいも何も、あそこでグダグダやる時間が勿体ないだろう? 今は一分一秒でも早くこのスタンピートの元凶を潰さないといけないというのに、スフィアに構っている時間など無いだろう?」

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