第73話 一生償っても償いきれない事
私は何をそんなに焦っていたのだろうか?
ロベルト様との婚約を破棄出来て、安心したのと同時に『公爵家長男との婚約者』という肩書が無くなった事で両親への罪悪感や周囲からの視線に『公爵家長男との婚約者』という肩書に見合った功績が欲しかったのかもしれない。
だからこそ私は冷静でいたつもりで周りが見ておらず、目先の功績に飛びついてしまったのだろう。
そして、そんな私たちが絶体絶命の時に助けてくれたのがマスク先生であり、その仮面の下の素顔は私が婚約破棄をしたロベルト様であった。
先生の素顔を見た瞬間、私は自分の醜い心をロベルト様は先に見抜き、婚約破棄をするように道化を演じていたのでは? という事に気が付いてしまった。
ロベルト様個人ではなくその肩書しか見ておらず、ロベルト様の為に何かしようとは微塵も思っておらず常に自分の家の利益、私個人の利益しか見ていのを、心の奥底では思っており、その事を考えてしまうと罪悪感から身動きが取れなくなってしまう為に見えないように心の奥に仕舞って蓋をしてみて見ぬフリをしていた事を見透かされていたのだろう……。
そもそも政略結婚とはそのようものであるし、私が負い目に感じる必要は無いのだが、ロベルト様はそれすらも見透かしていたからこそこのまま結婚してしまうとお互いに不幸になる未来が想像できてしまい、自ら道化を演じる事によって、婚約破棄になった時に私へ有らぬ噂が立たぬよう、護る為敢えてあのような行動をしていたのだとしたら全てが辻褄が合う。
もし本当に私が当初思っていた通りの男性であったのだとしたら婚約した後に必ず復讐してくるはずで、私はその事を想定して予め策を練っていたのだが結局ロベルト様は私や私の家族に復讐する事などは無く、むしろ人が変わったかのように婚約破棄以降問題行動を起こさなくなった。
あるとすればラインハルトが喧嘩を売って、強引にロベルト様へ突っかかってきた時くらいであろうか?
であれば、やはり私の考察は恐らく正しく、ロベルト様は婚約破棄をされて人が変わったのではなくて元の性格に戻しただけであると見るべきであろう。
そう考えれば私はロベルト様に対して一生償っても償いきれない事をしてしまった訳で……。
それに、あれほどの力を身につけるには私には想像すらできない程の努力が必要だった筈である。
ラインハルトはロベルト様の力を疑っているようなのだが、講師として模擬戦をしている時もおかしな点は無く、テレサさんが言っていたように私達にもその都度適切なアドバイスをしていた所から見ても恐らく本物の力であると判断するべきであろう。
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