第72話 舐めた考えで行動した結果



 それに加えて、何事も無かったんだとしても危険な場所へ生徒を止める事もせずに連れて行った事がバレてしまった場合、始末書などを書かされる等のちのち面倒くささが勝ってしまうというのも大きい。


 俺がいくら黙っていたとしてもラインハルトやスフィアがこの事を漏らさないという確証は無いしな……。


「そんな訳で俺の事を疑うのは勝手にしてもらっても構わないし、ついてきた結果死のうがどうで良いのだが、教師の立場として俺達について来る事は許可できない」

「……わ、分かったわ……っ」

「良いでしょう……。過ぎたる力はそれ相応の代償が付き物ですからね。その代償を支払う時が来るまでは好きにすれば良いでしょうっ」


 その事を伝えるとスフィアは何かを悔いるような表情で返事をし、ラインハルトは未だに俺を疑っており、俺がその代償を支払う事になると言ってくる。


 とうかラインハルトはテレサにあそこまでされても俺に反抗してくるあたり、それ程俺の事を憎んでいるのか、または命知らずのバカなのだろうか?


 まぁ、ここで素直に待っていてさえしてくれれば俺からすればどっちでも良いので放っておく。


 ここで口を出して言い合いするのも馬鹿らしいしな。


 それに、俺の腕が治った事で明らかにスルーズの表情がホッとしたものに変わったのが見られただけで今は十分であり俺もその表情を見て安心しているので、わざわざラインハルトと口論をして新しいストレスを抱える必要も無いだろうし、口論に勝敗がついたところで何のメリットにもならずただ時間を消費するだけだしな。


「では行こうか。ヴァルキュリア達はスフィアとラインハルトに危険が及びそうならば護るように」


 そして俺は召喚したヴァルキュリア達にスフィアとラインハルトを護るように命令すると、そのままこのスタンピートの元凶を潰しに行くのであった。



◆スフィアside



 私たちは軽率過ぎたとしか言いようがない。


 冒険者ギルドと帝国が慎重に今回のスタンピートに対して準備を進めているという事は、それだけ危険度の高いスタンピートであり、私達一学生がどうにかできるレベルではないという事に気付くべきであったし、ちゃんと冷静にこの状況を客観的にみて判断すればその答えに辿り着けたはずである。


 それもせずに『私達なら大丈夫』『ヤバい状態になれば逃げれば良いだけだ』と舐めた考えで行動した結果がこれである。


 しかも一周り近く年下のスルーズちゃんに護られていなかったら今頃私もラインハルトも死んでいただろう……。

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