第71話 俺はそれを許可しない。それだけだ



 そしてスフィアはどこか申し訳なさそうな表情で、ラインハルトは敵意の籠った視線を向けながら俺について来ると言ってくるではないか。


 というか俺が何かしらの方法で強くなった事をこれで証明できると思っているのか、ラインハルトは俺を見下すような表情で髪をかき上げて決めポーズをするの、普通に鬱陶しいのでやめて欲しい。


 しかしこの二人の現段階の実力では今あふれている、ここでは低レベルの魔獣や魔物一匹ですら倒すのは厳しいので、ついて来た結果死なれでもしたら夢見が悪いにも程がある。


 確かに二人は俺の事を嫌っているのかもしれないが、それでも今まで同級かつクラスメイトとして過ごして来たのであり、知りもしない別の街の他人が死ぬのとはわけが違うのである。


 それに、この二人から嫌われているのは自業自得ではあるし、嫌われているからと言って俺もこいつらの事を嫌いになるとかいうのは無い。むしろ迷惑をかけて申し訳なかったとすら思うくらいだ。


特にスフィアにはこの世界の貴族令嬢にとって貴重な時間を俺という人間に使わせてしまったのだから猶更である。


「やはりロベルト、貴様は自分の実力ではなく…………何でもないので武器を仕舞って貰えないでしょか? テレサ様……っ」

「次は無いと言ったはずだぞ? 戦場では一度の失敗が死に直結する。お前はこの短時間で二度失敗した事を今一度良く考えておけ」

「ぐぬ……は、はい。申し訳ございません」


 そして俺に同行を断られた事がラインハルトは気に入らなかったのか俺に対して文句を言おうとしたその時、テレサが殺気を隠そうともせず俺と一緒に最上級レアリティまで育て上げた剣を鞘から少しだけ抜いたところでラインハルトがそれに気づき、即座に謝罪をする。俺にではなくテレサへ。


「謝罪する相手が間違っている──」

「まぁ良いだろう。こいつにもこいつなりのプライドとかあるんだろうし、若いうちはこうやって色々と失敗をして学んでいくものだ。その失敗すら許されないというのはちょっと厳し過ぎると思うが? それでいうとテレサも最初俺に対して冒険者ランクだけ見て見下していたしな」

「そ、それを言われると弱いではないか……。ロベルト様がそこまで言うのならば私も引き下がろう……」


 その事が再度テレサの逆鱗に触れたようで、ラインハルトが殺される前に止めに入ってやる。


「それに今の俺はラインハルト、そしてスフィアの担任教師という立場だからな。である以上生徒を護るのは担任教師である俺の役目だ。生徒から色々言われようともそれが危険な行為であるのならば、俺はそれを許可しない。それだけだ」

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