第69話 俺自身にも突き刺さっていた



「で、では……テレサさんを破った人って……あのロベルトなのでしょうか?」

「あぁ、そうだな。だからこうして今私は自分の師匠としてロベルト様に教えを乞う為に今側に居させてもらっているのだっ!」


 そして俺は召喚したヴァルキュリアの中から回復系統が得意な者に右腕を回復してもらっている間、ラインハルトとテレサが何やら話しているのだが、そう言えばラインハルトは昔テレサがファンだって言っていたような気がする。


 そんなファンであるテレサが俺の事を褒めたたえながら教えを乞う為に一緒に行動をしていると聞いたラインハルトは俺がスフィアと婚約していた時に向けていた表情と同じ表情を俺へ向けてくるではないか。


「ロベルト……お前どこでそんな力を手に入れたのでしょうか? どうせ碌な物じゃないのでしょう?」

「おい小僧。一応今回は私の師匠であるロベルト様の生徒という事で大目に見てやるが、次にロベルト様を貶めるような言葉を言った瞬間にその首を切り落とすぞ? あと、何を勘違いしているか知らないのだが、短い間ではあるがロベルト様から教えて貰ったものはお前が考えたようなズルして手に入れた力ではなく努力して手に入れた事がしっかりと伝わってくる。もしズルして手に入れたのであれば私が踏み込んだ質問に対して知識と実技その両方で教える事などできないだろう? もしロベルト様の力を疑うのであれば、今までロベルト様の事を見下して、その本質を見抜こうとしなかっただけであろう?」

「ぐぬ……そ、そんなはずは……っ」


 そんなラインハルトの態度に対してついにテレサが怒り、それに言い返せずにラインハルトは口ごもるのだが、テレサの言葉に刺さったのはラインハルトだけではなく、横に居たスフィアや、そして俺自身にも突き刺さっていた。


 スフィアが苦い表情をしているのはラインハルトと同じ理由であり、俺の事を表面上でしか見ておらず、そこでしか評価せずに俺の事を貶めてしまったという事だろう。ただラインハルトと違うのは、スフィアは俺に対して悪い事をしてしまったという自責の念にかられているという事だろう。


 そして俺に関してはラインハルトが疑っている内容が正解であり、テレサの言っている事が間違っているという事である。


 しかしここで真実を言った所で余計にややこしくなるだけなので聞いてないふりをして無視をする。


「さて、腕も回復いたしこのスタンピートの大元を潰しに行くぞ、テレサ」

「はいっ! ロベルト様の実践を間近に見られるチャンスはそうそうないから、しっかりと勉強させてもらうよっ!!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る