第65話 後悔してしまう



 「はははははっ!! その時はお父さんがそいつをぶっ殺してやるからスルーズは安心してお父さんを頼ってくれていいぞっ!!」

「はいはい、今日はピクニックへ行くのでしょう? 御託はいいから出発する準備をしてくださいよお父さん」


 これは恐らく、初めて家族でピクニックへ行った日だろう。


 死ぬ寸前で楽しかった、幸せだったころの記憶を思い出すと、最悪死ぬつもりでここへ来たにも関わらず私はまだ死にたくないと思ってしまう。


 けれど、生き延びたところでお父さんとお母さんが戻って来てくれる訳ではない。





「そうだスルーズ。流石俺様の娘だなっ!! もう下級魔術を全て覚えたとは才能の塊じゃないかっ!!」

「体術や魔術を覚えるのは良いが、もっとこう女の子らしい事をしたいとは思わないのか? 思わないのね。まぁスルーズが好きか事をするのが一番良いだろう。であればスルーズが望むレベルまでこの俺様が育て上げてやろうっ!!」

「どうだスルーズッ! 美味しいだろうっ!! これはうどんという料理だっ!! そうかそうか気に入ったかっ!! ならば俺様の分も食べると良い!! 子供はいっぱい食って早くいっぱい寝て、大きくなれっ!! ……女の子の場合は大きくなれってのは逆にダメか。まぁスルーズならば身長が大きくなってもきっとモテモテだろうから大丈夫だっ!! お父さんである俺様が保証してやろうっ!!」


 そして、敵が私へ高威力の魔術を攻撃して、避ける体力も残っていない私は、向かってくる魔術を見ながらロベルト様との思い出を思い出す。


 ロベルト様には私みたいな子供を拾ったせいでかなり迷惑をかけてしまったという負い目を感じていたし、ここ最近は文句ばかりで態度も冷たい態度をとってしまたので、せめて一言謝りたかったな。あとありがとうと言いたかったな、と後悔してしまう。


「助けて……助けて、お父さん……っ!!」

「やっと俺様の事をお父さんと呼んでくれたか、スルーズッ! であれば今日を父の日という事で帝国民の休日にするように皇帝へ殴り込み、ではなく話し合いに行こうかっ!!」


 もしかしたらロベルト様ならば、今の私のお父さんであればこの状況から私を助けてくれるかと思ってしまった私は、次の瞬間に『助けてお父さんっ!!』と叫んでしまう。


「お、お父さん……腕が……っ!!」

「なに、スルーズを助ける為ならば腕の一本くらいくれてやろうではないかっ!!」


 恐らく、私が学園から出て急いで駆けつけてくれたのだろう事が、学園の教師が羽織るローブを着たまま来ている事から窺える事ができる。

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