第64話 こんなの絶対におかしい
あの頃は楽しかったな……。
まさかこんな事になるとは微塵も思っていなくて、この時の私はただ漠然と幸せな毎日を過ごしていた。
「あぁぁぁああああああ許さない許さない許さないっ!! お前のせいでっ!! お前たちのせいでっ!!」
「あら、子供の癖にやるじゃないのっ。それとも人間という生き物は私たちと違って子供の方が強いのかしら? でもそんな事はどってでも良いわぁ。これで少しは楽しめそうだもの。やっぱりただ殺すだけでは飽きるものねぇ……」
「す、凄い……っ。使っている剣での攻撃も魔術も、どれも規格外の強さである事が見ただけで理解できてしまいますね……っ」
「まさかスルーズちゃんがここまで強いとは思わなかったわ……。これじゃ戦闘をサポートするどころか逆に邪魔になってしまいかねないわね……っ」
畜生……っ!! 何で、何で私の攻撃が一撃も通らないのっ!? お母さん、お父さん、お兄ちゃんの仇だというのにっ!! 私はあの時と同じ無力だっていうのっ!? そんなのは嫌だっ!!
「あら、もう手札を使い切ったのかしら? だとしたら、今度はどんな表情で痛がるのか、怖がるのか試してみようかしら? ちゃんと私を楽しませなさいっ!!」
「きゃぁっ!?」
何で? どうして? こんな奴に私たちの幸せが壊されなければならないの? こんなの絶対におかしいのに、何で目の前の生き物は自分の好きなように生きているのだろうか?
神様は悪い事をしたら神罰を与えると言うけれど、私の村を遊び半分で壊滅させたのを討伐したのはロベルト様だし、目の前の化け物だって神様は何もしてくれない。
「絶対に許さない……」
「うふふふふ、そう来なくっちゃね。一回蹴り飛ばされたくらいで壊れちゃったら面白くないものねぇっ」
それでも、神様が例え目の前の化け物に何もしてくれないというのであれば、私が目の前の化け物を成敗するしかないし、例え死んだとしても一矢報いたい。
「ほらほらっ! 攻撃を当てないとまた蹴られちゃうわよっ?」
「何でお前みたいな化け物がっ!! あぎゃぁっ!?」
「ほーら、蹴られちゃった。で、も……あなた本当にレパートリーが無いわねぇ。もう飽きちゃったから殺しちゃうかしらぁ……っ」
「スルーズは、どんな大人になるんでしょうね」
「それはお前、俺たちの娘だっ!! きっと絶世の美女になるに違いないっ!!」
「お父さん、そうじゃなくてどんな方と結婚してどんな仕事をして、どんな友達がいて、どんな幸せな世界を作り上げるのでしょうね、という意味ですよ、まったく。けれども確かにスルーズは間違いなく美人さんね。将来は悪い虫に気を付けるのよ」
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