第61話 親らしいこと



「あ、ありがとうございます……っ」


 そして私は二人のサポートを受けつつ魔獣を殺していくのであった。



◆ロベルトside



「マスク先生っ!! スルーズさんが教室におらず、授業にでていませんっ!! どうやらラインハルトとスフィアの三人で学園の外へ出て行ったみたいですっ!!」


 朝、学園へと着きクラスの出席を取った後、魔術の授業の為に別のクラスへと移動して生徒達に初歩的な(自分からしたら)魔術を教えていると、血相を変えてサラサ先生が俺にスルーズが学園の外へラインハルトとスフィアたち三人で出て行ったと告げるではないか。


 試行動だけであれば注意するか受け止めるだけにしようと思っていたのだが、他人を巻き込むのであれば結構きつめに叱らないといけないよなぁ、とは思うしそうしなければならないというのも理解できているのだが、それ以上に『スルーズに嫌われたくない』という感情が俺の判断を鈍らせてくる。


 試行動をする子供、特にスルーズのような環境の子供は『怒られたい』という欲求からあえて怒られるような行動を取る子供もいるというが、スルーズはそうではないような気がするんだよな……。


「スルーズさんは、将来私の娘になるかもしれないので、私、物凄く心配ですわっ!! 聞く話では三人はスタンピートを阻止しに言ってくると友人たちに話して学園の外へ出て行ったみたいですし……っ!!」

「分かりました。俺が三人を探しに行ってきます。サラサ先生はその事を職員室まで伝えに言ってください。それとこの授業は話した通り俺は三人を探しに行くので自習とする。俺が教えた魔力操作の練習をしておいてくれ」


 サラサ先生がなんか変な事を冒頭言っていたような気がするのだが、スルーズは大丈夫だとは思うがスルーズのせいでラインハルトとスフィアが危ない目に遭う可能性は高いだろう。


 流石に自分の子供がよそ様の子供を危険にさらすなど言語道断であるので、ここはスルーズの親として直ちに三人を連れ戻すべきと判断した俺は、学生達へ授業を自習に切り替える旨を告げ、スタンピートが起こると噂されている東にある草原までいく事にする。


 今まで手のかからない頭の良い子供だと思っていたのだが、ちゃんと子供らしいところがあるじゃないか。


 真面目でいい子も良いのだが、やはり親としては子供に迷惑をかけられてなんぼだろう。


 であればこそ、ここは親としてしっかりとスルーズを𠮟らないとな……。


 確かにスルーズには嫌われたくない。


 けれども、嫌われてでも良いからスルーズの事を思って叱るいう、親らしいことがやっとできると思うと、それはそれでやる気が出てくるというものである。

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