第60話 止めるつもりも無い



 ラインハルトがまさか無計画だったとは思わなかったのだが、ここへ来る前に作戦を練らなった私たちも悪いので、そこを責めても仕方がないと、これからどの様に行動すれば良いのかという事について話し追う方向へ舵を切る。


「確かに、どうすれば良いのでしょう?」

「今回スタンピートを阻止するのはもう諦めて一度学園へ戻り、別の方法を考えてしっかりと作戦を練った方が良いんじゃないの?」

「いや……その必要は無いみたいです……」


 これからどうしようかと話しているその時、私は見てしまった。


 草原の奥から土煙と共に大量の魔獣たちがこちらへと来ているではないか。


 それは正に、普通の人であれば止める事の出来ない暴力であるだが、今の私はあの暴力を止められるだけの力を持っているし、その為に今までロベルト様と一緒に鍛錬して来たんだ。


「……ちょっと数が多すぎる気がするのですが、気のせいでしょうか?」

「確かにちょっと私たちだけではヤバそうかも……あ、スルーズちゃんっ!?」

「私は私の為にこれからアイツらを殺して来ますっ!! 二人は私に付き合う必要はないのでヤバそうだと思ったら近くの冒険者ギルドへスタンピートが始まった事を報告して避難してくださいっ!!」


 その光景を見て、そして今の私にはそれを止める力があるという状況で、私は私を止める事ができなかった。


召喚獣であるウルを私の復讐につき合わせて危険にさらそうとは思っていないので回収すると、二人には無理に付き合う必要は無いからこの光景を見て無理そうならば近くの冒険者ギルドへ報告してきて欲しいと伝え、一気にスタンピートが派生している魔獣たち犇めく中心へと駆けだして行く。


 こいつらが居ようが居まいが私の暮らしていた村は結局襲われていただろうし、私の復讐とは直接関係ないのかもしれない。


 ただ魔獣というだけで無差別に殺しに行こうとする私は、私の村を襲ったアイツらと同じなのかもしれない。


 でも、ここで私が止めなければ私と同じような子供たち現れてしまうのは間違いないだろう。


 私と同じような悲しみを一人でも背負わなくても良いように一体でも多く魔獣を狩るという衝動を抑える事を私はできないし、止めるつもりも無い。


「まったく、世話が焼ける子供ですねぇ」

「子ども扱いしないでくださいっ!」

「私たちがサポートするから、体力的にきつくなったら撤退するから早めに言ってよねっ!!」


 そんな私の自己中心的な行動であるにも関わらずラインハルトとスフィアさんが私を追いかけて来てサポートしてくれると言ってくれるではないか。

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