第55話 あと単純に鬱陶しい



 そして相当な負けず嫌いでもあるので、本当に中身は私よりも子供なのかもしれないし、そんな子供のままでいられるラインハルトが羨ましいと思ってしまう時が無いと言えば嘘になる。


 お父さんやお母さんに甘えたいと思っても、もういないし……かといってロベルト様に甘えたら、無いとは思うのだけれど万が一『こんな甘ったれた子供はいらない』とか言われたらと思ってしまうと、身体がすくんで甘える事ができないでいた。


逆にロベルト様はここ最近何かに付けては『スルーズッ!! 食べたいものは無いかッ!?』『スルーズッ!! 勉強で分からない所は無いかっ!?』『スルーズッ!! 魔術や体術で聞きたい事は無いかっ!?』『スルーズッっ!! 休日に行きたい所は無いかっ!?』『スルーズッ!!』『スルーズッ!!』『スルーズッ!!』と何か行動に起こす度に聞いてくるので煩いくらいである。


 私の事を考えての事だろうとは思うのだけれども、だからこそ私がロベルト様を縛っていると思うのが苦痛になってきていたりする。


 あと単純に鬱陶しい。


「しかし、スルーズちゃんのお父さんは仮面をつけているから実年齢は分からないのだけれど、私たちとそう変わらないくらいには若いと思うのに、スルーズちゃんが言う通り本当に強いわよね? 何度か授業の一環で模擬戦で戦った事はあるけど、私まだ底が見えないもの。それだけにマスク先生との力量にかなりの開きがあると思うと、いったい今までどれだけの鍛錬をして来たのか想像もできないわ」

「そ、そんな奴直ぐに俺が抜き去ってやりましょうっ!! あと少しで勝てそうな気がするんですよねっ!!」

「無理だと思うわよ?」

「無理です」

「ぐぬ……っ」

「ここ最近『ぐぬ』が口癖のラインハルトは置いておいて、一緒に食堂に向かいましょう?」


 そして私はロベルト様から頂いた狼型の召喚獣であるウルを召喚すると首元にまたがり、背中部分にスフィアさんが跨るのを確認してからウルに合図を出し、食堂までウルに乗って移動する。


「私ももし召喚獣を手に入れるなら狼型にしようかなぁ……?」

「はいっ。私のおすすめですっ!!」


 このウルなのだが、あれからロベルト様と一緒にレベル上げをしたおかげで、仔犬のように可愛かった見た目だったのが、今では体高が二メートルを超える程の立派な巨躯を持つ狼にまで育っていた。


 その為学園ではかなり目立っているものの、自慢の召喚獣なので自慢したいと思っている分好都合である。


 後ろで『置いて行かないでくださいよっ!!』と誰かが叫んでいる声が聞こえた気がするのだがきっと気のせいだろう。

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