第53話 自慢していた気がする


……何か問題が起きてからじゃ遅いのだが、それに関しては学園が何も対応してこなかったのが悪いと責任転換をする。


「でも、今はマスク先生が来てくれましたもの。欲をかきすぎるのはよろしくないですものねっ。それに、私って結構一途なんですよ?」

「あ、次の授業の準備がありますので、俺はここで失礼します」


 これ、もしかしなくても学園側がサラサ先生の食指が生徒に向かないようにと抑止力の為に仕えると判断して俺を高等部の、それもサラサ先生が既に受け持っている教室の担任にされた可能性があるのでは?


 とは思うものの、そもそも学園側がスルーズの実力を把握していなければ意味が無いのできっと気のせいだろう……。


 そう言えばギルドへスルーズが狩った地竜を納品した際にかなり自慢していた気がするのだが……きっと気のせいだろう。


 もし気のせいじゃなかったとして、流石にスルーズ程の子供が一人で地竜を狩るという俺の戯言を信じるバカもあるまい……。


 そう俺はある仮説が思い浮かんだのだが、気のせいだと思考の端に追いやってサラサ先生から逃げるように一限目魔術の授業を任せられている教室へと向かうのであった。



◆スルーズside



「……君はまだ子供のようですけど、俺達と同じ実力を本当に、痛いっ!!」

「やめなさいっ!! 子供にまで喧嘩を売ってどうするのよ、ラインハルトっ!! みっともないわよっ!」

「うっ、スフィアに言われると弱いなぁ……」


 ロベルト様が教室から出て行った瞬間、先程ロベルト様に喧嘩を売ったラインハルトとかいう人が私に話しかけてきた。


 さっき私の恩人であるロベルト様に喧嘩を売った事を、ロベルト様は許しても私は許してないので、ラインハルトとかいう人が私と模擬戦をやりたいと言うのであればボコボコにしてロベルト様が如何に凄いかを教えてやろうと思っていたのに、スフィアとかいう女のせいでできなくなってしまった。


「怖がらせてしまってごめんなさいね。でもこのバカも悪気があってやったわけじゃないの……。ただちょっと魔術や体術の事となると頭がおかしくなるだけで……」

「べ、別に良いでしょう? 俺は自分よりも弱い奴に教えられる事は何も無いと思っているし、その考えを変えるつもりは無いですからね」

「なら大丈夫……。ぱ…………マスクさんはラインハルトさんよりも何倍も強いですからっ!!」

「な、この俺よりもあんな奴が強いとでも──」

「やん、可愛いっ!! 今パパって言おうとしたでしょっ!! 飛び級したからって変に大人ぶる必要はないわよ? 私たちの前では存分にパパって言って良いかねっ?」

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