第51話 黒歴史になってしまっている
どうせこういうヤツは模擬戦をして勝ったところで難癖をつけてくるに決まっているので『相手にしない』というのが正解だろう。
相手にしたら恐らくクラスの連中もラインハルトの空気に呑まれて扱いづらくなるだろうが、ここで毅然の態度で相手にしないという事で『この教師には小細工は通用しない』と思わせる事で真面目な生徒は単位の為にちゃんと授業を受けるだろう。
俺が相手をしない事に腹が立つからと授業に出ずに単位を落とすのであれば自業自得だし、授業に出ないという事はこういうウザい生徒の相手をする必要が無いという事でもあるので、こんなバカの相手をするのはデメリットしかない。
唯一メリットがあるのだとしたらラインハルトの顔面を殴れる事くらいだろうか?
しかしながらいくら模擬戦であり生徒から喧嘩を売ってきたとはいえ教師が生徒に暴力を振るうのは駄目だろう。
恐らく前教師もこれによって本来の力を出す事ができずに、ラインハルトをケガしないように手加減して相手をした上で勝たなければならないという枷の中、どうにか勝てたのだろう。
その時点でこの教師はラインハルトよりも頭一つ以上強いと分かりそうな物なのだが、ラインハルトはそんな事すら分からずに『生徒にギリギリ勝てた教師』と見下し煽りまくっていたのだろう。
よくその教師は今まで耐えてきたと思う。
俺がその教師の立場であったら親が貴族だろうが何だろうが二度と偉そうな口を聞けないように徹底的にボコボコにしていただろう。
…………恐らく俺もそういうウザい生徒だったのだろうと思うと、今さらながら申し訳なく思って来ると同時に、この際迷惑をかけた教師たちに正体を明かした上で謝罪行脚に行きたいと思うくらいには黒歴史になってしまっているではないか。
特に俺の親は公爵家だから、気に入らない事があると癇癪を起す俺はさぞ扱いづらかっただろうと容易に想像できる。
それで言えばまだラインハルトの方がマシまである。
…………このクソガキよりも俺は酷かったのか……我ながらキツイな。
「おい、逃げるのか?」
「勘違いするなよ? 逃げるのではなく相手にしないだけだ。あと、これだけは覚えておけよ? 俺の娘に何かしたら親が貴族だろうが何だろうがぶち殺すからな? 俺がウザいのならば俺に突っかかってこい」
「…………は、はいっ」
ただ、このままラインハルトを野放しにするのもそれはそれで娘であるスルーズにちょっかいをかけられそうなので、ありったけの殺気を込めて釘を刺しておく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます