第46話 俺が学園の講師となる


「あぁ、そうだ。お主にもう一つ頼みたい事があるのじゃが……」

「何だ?」


 とりあえずギルドマスターからの依頼については了承する方向でほぼほぼ決まり、これで話しも終わりというところでギルドマスターが俺に別途頼みたい事があると言うではないか。


「お主、学園の講師をしてみたいとは思わないか?」





「ロベルト様は仮面を付けていくんですか? でしたら私も仮面をつけた方がよろしいでしょうか?」

「いや、正直顔を合わせると面倒くさい事になりそうな奴らが何人かいるから隠すだけだ。だからスルーズは仮面をつける必要は無い」


 初めは断る予定だったのだが、そこで俺はスルーズの事が頭を過る。


 俺もスルーズの年頃から小等部に通っていたなと思い出した時、スルーズにもそういう環境に預けた方が良いのでは? と思ったのである。


 これが村での生活であれば自宅で読み書きや計算を教えても近所同士で友達ができるだろうが、公爵家の娘となると自宅で勉学に励んだとしても友達はできないだろう。


 できて大人がスルーズの友達の代わりになってくれるくらいであり、それはあくまでも友達の代わりであり使用人ないし雇った講師陣がスルーズに合わせてくれているだけで本当の友達ではない。


 俺はそこで失敗したのだけれども、俺が講師としてスルーズを見守る事ができれば、俺のように道を外れる事も無いだろうし、道を外れそうになった時は叱って正してやれば良い。


 ようは、俺はスルーズに同年代の友達を作って欲しいと思ったのである。


 こればかりは俺と鍛錬をしたり、自宅で勉学に励むだけでは作れないしな。


 そう思った俺は、俺が講師となる代わりの条件としてスルーズを入学させる事を告げ、ギルドマスターはそのまま学園長へ連絡をし、後日許可が出たという事で今日スルーズの登校日兼、俺の教師としての出社日でもあるという訳である。


 そして、一応スルーズと同じ学級という願いも通った為高等部であるアイツらと鉢合わせする事はまずないと思うのだが、同じ敷地内で過ごす以上絶対にないと言い切れないので念には念をという事で冒険者ギルドへ行く時のように仮面を被っていく事にする。


 その仮面をスルーズが『自分も仮面を付けた方が良いのか?』と聞いてくるので、その必要は無いと言うと、少し寂しそうな表情を見せる。


 これは……『お父さんと一緒が良かった』というヤツなのではなかろうかっ!?


 なんと愛らしい生き物なのだろうか?


 しかし、スルーズに友達を作るというのが、俺が学園の講師となる理由である以上、流石にスルーズが仮面を付けて登校しては意味が無いので断腸の思いで気付かないふりをする。

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