第45話 テレサが引き受けた依頼



 何だこいつ? とは思うものの、ギルドマスターのジジイが俺の正体を疑うのも理解できる。


 つい最近まで悪評しかなかった公爵家のドラ息子が序列三位になれるほどの実力を付けるまで実は裏で鍛錬していました、なんて信じる方が難しいだろうし、俺だって間違いなく疑う。


「……フン、そんな事を言ったところで俺の事を疑い続けるのだろう? ルールでも禁止されているにも関わらず冒険者側である俺が冒険者ギルド側から一方的に疑われるというデメリットを背負う意味も分からない。 というここでここは俺が折れて仮面を外して素顔を見せよう。ここで疑心暗鬼のまま終わるよりもギルドマスターに貸し一つ押し付けた方が俺的にもメリットが大きいからな」


 しかしながらここで疑われたまま終えるのと、正体を明かすのと今後の事を考えれば後者の方がメリットが大きいと考えた俺は、あえて自分からギルドマスターにだけ正体をばらす事にする。


 勿論、俺がギルドマスターの為に折れたという体にする形にする事で貸しを作る事も忘れない。


「…………わざわざすまない。この貸しはいずれ返そう」

「では、ここでうだうだやっていても時間が勿体ない(娘が心配なので早く会いたい)ので、さっさと本題へ移行してもらうと有難いんだが?」

「あぁ……無駄な時間を取らせてしまって申し訳ない。実は、これはもともと元序列三位であるテレサに依頼していたものだったのだが、テレサが序列三位を剥奪されてしまったせいで白紙になってしまった依頼が一つあるのじゃ。」


 ギルドマスターは禿げた頭に汗をかき、髭を触りながら険しい顔をして話始める。


 どうやらギルドマスターの話曰く、俺がテレサを倒した事によって大型依頼が一つ塩漬けになりかけているという話であった。


 その依頼はテレサの能力にあった依頼であった為、他の序列持ちに依頼しようにも首を縦に振る者は居らず困っていたところで、どうやら俺の能力が奇跡的にもテレサと同等の氷を使う能力であったという事が分かり、今回俺に白羽の矢が立ったという事のようである。


 因みに再度テレサへ依頼すれば良いのでは? と聞いてみると『それが、テレサと何故かまったく連絡が取れなくなったのだ。最悪自分が負けて序列から外された現状を受け入れられずに自殺もあり得ると思っての……』という事らしい。


 ……という事はテレサが俺の過去やら何やらを嗅ぎまわる事が無ければ、今俺は帝都まで行くような事にはならなかったという事なのではなかろうか? 


 ……であればこの依頼はテレサにやらせれば問題ないだろう。元々テレサが引き受けた依頼だし自分のケツくらい自分で拭いてもらいたい限りだ。


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