第44話 それもまた致し方なし



 スルーズは俺について行きたそうにしていたのだが、流石に連れて行くわけにもいかないだろう。


 それにテレサは俺にボコボコにされたとは言え冒険者ギルドに所属している冒険者元序列三位なので、とりあえずテレサにスルーズの事を任せておけば良いだろう。


 本当はマリエルに任せる予定ではあったものの、テレサのお陰でマリエルとともに帝都のギルドマスターへ会いに行くことができるのは嬉しい誤算である。


 序列三位のテレサの実力から見ても俺一人で行ったところで俺をギルド側がどうにかできるとは思っていないのだが、これから行くところはギルド側の内部である為万が一俺が知らないような魔術や魔術陣等を行使されて初見殺しされてしまうという事が無いとは言い切れないので、ここでマリエルを連れて行けるというだけで危険度は全然違って来るだろう。


 というかマリエルもスルーズと一緒に鍛錬をしていた為、戦闘面で言えば元序列三位のテレサをも上回っているので、ただでさえ俺一人でも万が一無い限り大丈夫という状態から万が一があっても大丈夫だろうに変わったという感じである。


「ギルドマスターに呼ばれた者だが?」

「かしこまりました。案内いたします」


 そして俺とマリエル、テレサとスルーズで別れ受付カウンターへと向かい、受付嬢へギルドマスターに呼ばれている旨と序列三位を証明する冒険者プレートを見せると、受付嬢は理解してくれたのか疑う事も無くギルドマスターのいる部屋へと案内してくれた。


「ほう、君がテレサ君を破って新たな序列三位になった者か……。何というかまるで一般人のようにしか感じないが……恐らく弱く見えるようにしているのだろうな。自分を強くみせようとしているのは三流じゃて。して、その仮面の下は見せてくれないのかね? どうせお主の正体は分かっておるので今さらじゃろうて」


 俺とマリエルは受付嬢に通された部屋に入ると机が一台とソファーが対になるように二台置かれており、既にギルドマスターが座っていた。


 そしてそのままギルドマスターが座るように手で促すので俺達は断る理由もないのでソファーに座ると、ギルドマスターが俺に仮面を取れと言ってくるではないか。


「……俺が誰か分かっているのならばそれで良いだろう? 仮面の下が別人だと疑うのであればそれも良いが、冒険者ギルドに何かしらの圧力がかかるかもしれないな」

「……ふむ、冗談じゃて。そもそも冒険者の情報を無理やり探るような事は冒険者ギルドの禁止事項にも書いておるし、お主が見せたくないと言うのであればそれもまた致し方なし」

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