第42話 漠然と思っていた
それに、もしかしたらロベルト様の事である。
召喚獣は持っているだろうし、言えば与えて下さると思ってはいたが、だからと言って『召喚獣が欲しい』とはロベルト様に直接言える訳も無く、日々を過ごしていた。
それに、今の環境がどれだけ恵まれているか理解できているが故に言いづらくもあった。
ただでさえ何不自由ないように、それに私が強くなるためにと色々してくれているにも関わらず、私が『ただ欲しいだけ』という理由で召喚獣が欲しいなどと言える訳も無かった。
街に出た時にお菓子や玩具を強請る子供を見る度に、私も召喚獣が欲しいと強請ってみようかな? と思い、それと同時に『嫌われてしまうかも』とか『捨てられてしまうかも』とか、そういう事を考える事も無く強請る事ができる子供たちが羨ましく、輝いて見えたが次の瞬間には心の奥底にしまい、何事も無かったかのように過ごす。
そんなある日、ロベルト様が『欲しい物やして欲しい事があれば素直に言っても良いし言って欲しい』と言ってくれたので、私は勇気を振り絞って『召喚獣が欲しい』と言ってみる事にした。
言って欲しいとロベルト様が言っているので、ここで言わないのはそれはそれで失礼だとも思うし……。
本当は可愛らしい召喚獣が欲しいのだが、流石にそこまで我儘を言う勇気は無かったのだけれど、この際どんな召喚獣でも貰えるのならば嬉しいと思える。
私の本当のお父さんは召喚獣を使役して狩りに出ていたし、お母さんは召喚獣を重たいものを運ぶために使役したりしていた。
だから私も将来は魔獣と契約して自分だけの召喚獣を使役するんだろうな……と漠然と思っていたのだけれども、あの日以降それは敵わぬ夢だと自分に言い聞かせて諦めていた。
でもやっぱり、召喚獣が欲しいという気持ちを捨てきれずにいた私は、ロベルト様が目の前に三つの水晶に入っている、まだ子供の魔獣を見て思わずぽろぽろと泣いてしまう。
その三匹の内の一匹が、本当のお父さんが使役していた魔獣と同じ狼の魔獣であったからである。
「それは、もしかしたらスルーズのお父さんとお母さんが天国で見守っているのかもしれないな」
私が急に泣き出すのでロベルト様が慌てどうしたのかと聞いてくるので、本当のお父さんが使役していた魔獣が、ここにいるのと同じ白い狼の魔獣だった事を話すと、ロベルト様は『スルーズの両親が天国で見守っているのかもしれない』と言ってくれるではないか。
そして私は涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしながら狼の魔獣を選ぶのであった。
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