第41話 スルーズが口にした願い



 テレサを弟子にする事よりも、スルーズに『よいこにするから』という言葉を使わせたくないと思ってしまったし、この判断は間違っていないと思う。


 ただでさえ俺に捨てられないかと思いよいこに過ごそうというのが伝わってくるにも関わらず、これ以上をスルーズに要求させるのは絶対に間違っている。


「それとスルーズ」

「は、はいっ。ロベルト様っ」

「スルーズはもう少し我儘になっても良いんだぞ? それこそお小遣いが欲しいとか、あれが食べたいとか、修業はせずに遊びたいとか、もっとお父さんに我儘を言っても良いし甘えても良い」

「で、ですが……」

「それにそうした方がお父さんは嬉しいんだ。世話のかからないスルーズも良いけど、少しは親らしく子供の面倒を見たいんだ」


 スルーズはまだ前世でいうと小学一年生くらいの年頃である。

 

 にも関わらず大人と同じかそれ以上に空気を読もうとするきらいがある。


 それはやはりスルーズの環境を鑑みれば仕方が無いとは思うのだが、だからこそ俺はスルーズにはより一層子供らしく過ごして欲しいと思っている。


「で、でしたら一つ……お願いしても良いですか?」

「あぁ。何でも言ってごらん。お父さんにできる事ならば何でもやってあげるよ」


 俺がそうスルーズに言うと、スルーズは恥ずかしいのか緊張しているのかその両方か、顔を赤くしながら俺にお願いしたい事があるという。


 あぁ、俺が見た光景を保存できる魔術があれば……と思わずにはいられないくらいにもじもじとしながら上目づかいで見つめてくる俺の娘の可愛さは暴力的だ。


 よし、後でその魔術を作るか。


 そんな事を思っている時、スルーズが口を開くので絶対聞き逃してなるものかと集中する。


「あの……私も召喚獣が欲しいですっ」

「……良いだろう。ここに三つのクリスタルがあるじゃろ?」

「…………じゃろ?」

「気にするな」


 スルーズが口にした願いとは、召喚獣が欲しいという内容であった。


 そういう事であればいくらでも、と言いたい所だがいきなり何匹も使役するのも大変たと思うのでまずは初心者でも扱いやすい召喚獣三種類のうち一匹から使役するべきだろう。


 それに、扱いやすいからと言って決して弱い訳ではないのでスルーズの護衛として、それこそテレサよりも役に立つだろう。



◆スルーズside



 まさか、本当に召喚獣を与えて下さるとは思ってもみなかった。


 召喚獣とは使役する者はただでさえ少ない上に、役に立つ魔獣となればなるほど当然討伐ランクも上がっていく為、そんな危険な事はさせてもらえないと思っていた。



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