第40話 最後まで言わせてはいけない



 テレサから想像の斜め上からの答えに、俺は思わず素で返事をしそうになるのをなんとか我慢することができた。


「スルーズはどう思う? お父さんの弟子にしても良いと思うか?」


 しかしこれはスルーズが『聞いて欲しい』と願いから確認したのであり、もしかしたらスルーズは何か考えがあってテレサの話を聞いて欲しいと言っていたのかもしれない。


 まぁ、無いとは思うがゼロでは無い為俺が勝手に『スルーズはこのテレサという女には何も求めてはおらず、可哀そうだからという感情だけで言っただけだろう』と決めつけて判断するのは間違っているし、そうやって相手の気持ちを決めつけて行動しているといつか取り返しのつかない失敗を起こしてしまうのは前世の経験からしても明らかである。


 それに俺はスルーズに『お父さん』と呼ばれる事を目標にしており、であればこそスルーズの好感度が1パーセントでも上がる可能性があるというのならば上げるべきだろう。


 1パーセントと聞くと当たらないと思うかもしれないが、アプリゲームのトップレアよりも確率は高いので当たる時は普通に当たる確率である。


 確認するだけでミスを回避できるのであれば確認するに越した事は無いだろう。


 確認するだけであればタダだしな。


「え? ロベルト様の弟子になるという事は、私とある意味で同じって事になるのですか……?」


 そう思い俺はスルーズに確認すると目を輝かせてそんな事を言ってくるではないか。


 そのスルーズの表情からも俺がテレサを弟子にしないという選択肢があるとは微塵も思っていないだろう。


「…………」

「…………駄目なんですか?」


 俺がどうしたものかと黙ってスルーズを見つめていると、さっきまで嬉しそうだったスルーズの表情はしょぼんりと低くなり、悲し気な表情で『駄目なのか?』と聞いてくる。


 きっと子供が子猫を拾ってきた時の親の感情はこんな感じなのだろう……。


 可愛い(娘が)、けど断りたい。でも娘の願いを叶えてあげたい。自分がただ一言『分かった』と言うだけで娘の笑顔が見れる。でも、面倒事は避けたい。


 これらが俺の頭の中でループしてしまっている。


「……私、今以上におりこうさんになるか──」

「分かった。テレサを俺の弟子にする事を認めよう」

「──……へ? 本当ですかっ!? やったぁっ!!」


 そんな感じで固まっていると、スルーズが口を開く。その口から出てくる言葉を俺は最後まで言わせてはいけないと思い、咄嗟にスルーズの言葉を遮って、テレサを弟子にする事を認める事にする。

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