第39話 え? やだ。
しかし、いざ反論しようとした時俺は気づいてしまった。
これは所謂悪魔の証明というものではなかろうか? と。
「あなた、特別昇給試験の時は見る目が無いと思っていましたが、その評価を訂正しましょう。数々の噂を聞いても信じる事はせず、しっかりとロベルト様の事を客観的に見て真実に辿り着くあなたは見る目があると言っても過言ではないでしょう」
「や、やはり私の仮説は正しかったのだな……っ!!」
そして俺がどう反論すれば良いのかと悩んでいると、普段俺の一歩後ろにいるマリエルが俺の前に一歩でるとテレサに『見る目がある』と言って握手をするではないか。
いや、だから見る目が無いんだよ!
と言いたいがそれを説得できる程の説明を俺はできない為、ここでそれを言っても『照れているだけだ』とか言われるだけなので訂正する事すらできない。
「……分かった分かった。テレサがそう言うのであればそうなのだろう。では謝罪と感謝の言葉も受け取ったし、気を付けて帰るんだぞ?」
「…………」
「…………」
「何だよ?」
「ロベルト様、私に良い案が浮かんだのですが?」
「奇遇だな。私も実は感謝の言葉と謝罪の他にロベルト様へ良い話を持って来ていたのだ。恐らくそこの側仕えメイドが浮かんだ案と同じ内容だと思う」
あぁ、俺もなんとなくそれがどんな内容か伝わっているし、それが良い案ではなく面倒事が増えるだけの案という事も理解しているつもりだ。
「分かった。しかし、今日はもう遅いから一回かえって後日その話をしないか? ほら、女性を遅い時間に返すと危ないだろう?」
「ロベルト様、今まだ昼前なのですが? そもそも元序列三位のテレサさんに危ない場面とかそうそう無いのでは?」
「一度女を捨てたこの私を、異性として見てくれるのか……っ!? こんな私を異性としてくれる男性はいつぶりだろうか……っ」
くそっ。このまま勢いで帰らせる作戦だったのだが流石に無理があったか。
「ロベルト様……少しお話を聞いてあげても良いのでは?」
「……スルーズがそう言うのならば仕方がないなぁっ!! しかし、スルーズは優しいなっ!! 将来は聖女か何かになるのだろうなっ!! 今から楽しみだっ!!」
そんな俺にスルーズが『少し話を聞いてあげたら?』と言うではないか。
こんなどこの馬の骨かも分からない冒険者の事を思って行動できるスルーズは、やはり天使に違いない。
「では、ここは私からその案とやらを言わせてもらおう。……私をロベルト様の弟子にしてもらえないだろうかっ!?」
え? やだ。
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