第37話 悪い奴ではないのだろう
…………他人んちの別荘の門前で何やっているんだ? コイツ。
とりあえず見なかった事にしてスルーしようとも思ったのだが、そもそもこいつは腐っても元序列三位の実力(俺からすればレベルは低いのだが、この世界ではトップレベルの実力なのは間違いない)の持ち主なのは事実なので、ここでコイツを無視する方が面倒事が増えそうだと思い、面倒くさいと思いつつもそれ以上に面倒くさい事になる前に今問題を解決する方向へと切り替える事にする。
「……何をやっているんだ? 他人んちの門の前で……」
「私はただ、ロベルト様に感謝と謝罪をしようと思って来ただけだっ!! だと言うのにこいつらが私の話を聞く前に止めるではないかっ!!」
「いや、それはそうだろう。お前アポイント取って無かったんだから止められて当たり前だし、こいつらはお前みたいな奴を敷地内に入れないのも仕事の内だから、入れてしまっては門の前でわざわざ見張っている意味が無いだろう……」
「た、確かにそれを言われると困るのだが……しかし一言謝罪するだけでアポイントを取るのも失礼かと思って……」
まぁ、こいつなりに俺の事を思っての行動のようなのでここら辺にしといてやるか……。
「分かった分かった。では謝罪を聞いてやるから中に入れ。だがアポなしで入れるのは今回だけだぞ?」
「ありがとう。やはりロベルト様は私が出会った他の貴族とは違うようだなっ!!」
そう言いながら嬉しそうに敷地内へとテレサが入ってくるのだが、それを見る使用人たちの冷めた視線に気付いて欲しい。
「というかその『ロベルト様』ってのは何だよ? 気持ち悪いな」
「感謝と謝罪をする相手に『貴様』と言うのもおかしな話だろう?」
「…………なんか知らないけどお前に正論で返されると腹が立つな」
「ひ、酷くないかっ!?」
まぁ、悪い奴ではないのだろうな。ただ、貴族との間に何かあったのだろう事は容易に想像できるので、そこに関してはあまり深く聞かない方が良いだろう。
「それで、その悪かった。私はロベルト様の事を他の貴族たちと同じ思っていたし、貴族は全員同じ生き物だと一括りにしていた。しかし平民にも良い人も悪い人もいるように貴族にもまた良い人も悪い人もいる同じ人間であるという事を失念していた事に気付かせてもらった。まぁ、その為にロベルト様の事を調べさせてもらったのは許して欲しい……。あと、私にその事を気付かせてくれた事、そして特別昇給試験の時にあんなに酷い態度をしていた私に治療をしてくれてありがとうっ!!」
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