第36話 可愛い子には旅をさせよ



 そう俺はスルーズに説明するのだが『まだ幼いスルーズにこんな事をさせて大丈夫なのだろうか? 泊りがけでの馬車移動はもう少し大きくなってからの方が良いのではないか?』などと考えてしまうのだが、可愛い子には旅をさせよとも言うし、一人で旅をさせるのではなく俺も一緒に行くのだから大丈夫だと言い聞かせながら話す。


 そんな俺を見てマリエルは何か言いたげな視線を投げかけてくるも、基本的には何も言ってこない。


 ……言いたい事があれば遠慮せずに言って欲しんだが? 逆に気になってくるではないか。


「泊まり……馬車移動……野営……乗馬……っ!! た、楽しみですっ!!」


 そしてスルーズは俺の不安とは裏腹に話せば話す程目を輝かせてくるではないか。


 確かに思ってみれば俺も前世ではスルーズ位の年頃にこんな事を親から言われたら冒険をするみたいで興奮していただろうな……と思う。


 ちなみに今世の俺だと間違いなく『何故俺様がこんな面倒くさい事をしなければならない?』と、ムッとした表情をしていただろう。


 我ながら可愛くない幼少期であったと反省したくなると同時に両親には、こんな俺に変わらず愛情を注いでくれて感謝しかない。


 逆にいえばスルーズは可愛いという事でもあるし、まさに可愛さがまた立証されてしまったという事でもある。


 まぁ、俺の娘の時点で可愛さは保証されたようなものなのだが、その可愛さを立証できるものはなんぼあっても問題ないからな。


「そうか。楽しみだと言うのであれば問題は無さそうだな。とりあえずいきなりぶっつけ本番というのもあれだから、出発する日まで乗馬と野営、主に料理などを覚えておこう。では、早速庭で乗馬の練習をしに行こうか」

「はいっ!!」


 しかし、流石にいきなりぶっつけ本番というのは怖いので、先に乗馬と料理を教える事にする。


 テントなどは実際に道中で一緒に作って覚えていけば良いだろう。


「……何してんだ? あいつ……」


 そう思い家の扉を開けると、門の外で使用人とひと悶着を起こしているテレサの姿が目に入ってくるではないか。


「あっ!! ロベルト様っ!! 私だっ!! テレサだっ!! ロベルト様っ!!」

「ちょっとあなたっ!! ロベルト様へ勝手に声をかけるのは失礼ですっ!! 止めなさいっ!! そもそもアポイントを取ってからここへ来てくださいと先ほどから申しているでしょうっ!!」

「ならば今ここでロベルト様へ会う旨を言えば問題ないだろうっ!!」

「そういう問題ではございませんっ!! というか普通に失礼なので止めなさいっ!!」



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▲マリエルやスルーズ、他の使用人と被るのでテレサの口調を変更しました。



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