第35話 正直面倒くさい
折角俺の娘がやりたいと言っている事を大人の俺たちが『必要ない』とセーブさせて本来成長していくであろう娘の才能と可能性を潰してどうなるのか。
そんなものは大人のエゴでしかない。
俺も前世で子供の頃、誕生日やクリスマスの時にカードゲームをやりたいと親に言っても『そんな価値のない物にお金を使っても無駄だ。別の物にしなさい』と言われてかなり悲しい気持ちになった事を今でも思い出す。
大人から見て無駄だと思う事であっても子供からすれば『今必要な事』なものほど大事なものは無いだろう。
その事をマリエルに力説したら『別にロベルト様の子育てを否定するつもりはございませんよ。ただ親バカだと思っていたのが重度の親バカだと認識を変えるくらいです』と返されてしまう。
俺は別に親バカでも良いとは思っているのだが、これで親バカだと言われるのはそこはかとなく心外である。
「ロベルト様、お手紙が来ております」
そんなやり取りをマリエルとしていると、使用人の女性から俺宛てに手紙が来ていると言い、手紙を渡して来る。
「…………面倒くさ……」
その手紙の内容を簡潔に言うならば『新たに序列三位となったロベルト様は一度帝都の冒険者ギルドへ顔を出すように』というようなものであった。
「行かないのですか?」
「正直面倒くさい」
「ですが逆にいかない方が面倒くさい事になりかねないのでは?」
「それなんだよなぁ。まぁでも、道中スルーズの修練も兼ねて行くとするか」
俺が渋い顔をしているのを見てマリエルが『行きたくないのか?』と聞いてくるので正直に『面倒くさい』と返すと『行かない方が面倒くさい事になるのでは?』と返されてしまっては返す言葉もない。
最悪、行ってみて面倒くさい事になるようであれば武力と権力で黙らす事も視野に入れつつ、スルーズにとって馬車移動というのもいい経験になるだろうと思うと、そういう面(スルーズの事)を考えればメリットでもある為俺は帝都の冒険者ギルドへ向かう事に決めるのであった。
◆
「良いかい? スルーズの。 一か月後に帝都の冒険者ギルドへと向かう事になった」
「て、帝都ですか……っ!!」
「あぁ、帝都だ。しかしここから馬車でかなりの日数がかかるので、それを利用してスルーズには乗馬の練習、野営のスキルを身に着けてもらおうと思っている。今までは討伐依頼は行けども食事などは俺のストレージから出していたし、基本的には日帰りだったからこれも良い経験となるだろう」
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