第34話 ちょっとだけ恥ずかしい



 確かに、みんなの言っている事は理解できる。


 しかしながらそれはそれこれはこれである。


 スルーズの身に降りかかった不幸を考えれば俺の事を『お父さん』ないし『パパ』となかなか言えないというのも理解できるがそれとは別に俺はそう呼ばれたいのだ。


 そう思うものの、これに関しては俺の感情よりもスルーズの感情を優先するべきだろう。


「良いだろう。こうなれば鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギスだ」

「? どうかしましたか? ロベルト様」

「いや、うちの娘は自慢の娘だなと思ったまでだ。もうこのトカゲ擬きを一人で倒せるようになったなんて、お父さんは鼻が高いぞっ!! それこそ、自慢できる友達がいないのだが、その代わりに毎日使用人たちに自慢しているくらいにはっ!!」

「……知ってる。それはちょっとだけ恥ずかしいかもです……っ」

「ははははははっ!! 少し照れているスルーズも可愛いなっ!!」


 俺が『自慢の娘』と言うと、少し照れた顔をするので、俺はその可愛さから思わず抱きかかえて頭を撫でる。


 まぁでも、例え『お父さん』や『パパ』と呼ばれなくとも、スルーズには本来本当のお父さんや母さんから貰えるはずだった愛情に負けないくらいの愛情を注いで育てていこうという覚悟はとっくにできているので『お父さん』や『パパ』と呼ばれないからと言って俺がスルーズに向ける愛情の量が変わる事はない。


 いや、嘘を吐いた。変わる。正直な話スルーズの親となる決意をした時よりも今の方がスルーズに向ける愛情の量は間違いなく増えている。


「まったく、どこまでスルーズを強くするつもりですか?」

「どこまでって、スルーズが望む限り強くさせるつもりだ。それの何がいけないと言うんだ? それに、それを言ったらマリエル。お前もスルーズと同等かそれ以上に強くなっていっているではないか。それはどうなんだ?」

「私は良いのです。ロベルト様の護衛もしなければならないので強くなる事にデメリットはござません。むしろそういうメリットがございますので。ですがスルーズは強くなるメリットは自衛くらいしか無いので街のチンピラを倒せるレベルで十分なのでは?」


 俺がスルーズを片手で抱っこして、もう片方の手で頭を撫でているとマリエルが『スルーズをどこまで強く育てるつもりか?』と聞いて来るので『スルーズが望む限り強くさせるつもりだ』と答えると、まるで周りが見えていない親バカを見るような目でマリエルは見つめながら『街のチンピラを倒せるくらいで良いだろう』と言うではないか。

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