第33話 呼んでくれない
円卓を囲って各冒険者ギルドのギルドマスターたちが例の人物について思い思いの感想を言い合っていく。
しかしながら実際に本人と会っている者はここにはおらず、どこまで行っても妄想の域を出ずに話は纏まらないまま続いていく。
「確かにこうしていつまでも憶測で語り合うのはただ時間を費やすだけだな。おい、元はお前の所の冒険者だったんだろう? 流石に知らない訳はないよな?」
「申し訳ないが彼が私の冒険者ギルドへ来てから数か月程度しか経っていないので詳しい内容になるとまるで分からないというのが現状だ」
「ち、使えねぇな」
「まぁそう言うな。そもそもそれはギルドマスターという立場故だからこそ起こる問題であり、実際に冒険者と一番顔を合わせるのは受付嬢です」
「言い訳は良い。ようは貴様は自分の立場を言い訳にしてこの場を乗り切ろうとしているだけだろう?」
そして話し合いは件の新たな序列持ちを作った冒険者ギルドのギルドマスターへの追及へと変わって良くも、当の本人は焦る事も嫌な顔もせずに余裕そうだ。
「何も私は知らないとは言ったが、その対処はしていないとは言っていないだろう? その早とちりする癖は悪癖だから直した方が良いと前から言っているだろう? まったく。 では入って来なさい」
そう件のギルドマスターは扉の向こうへ話しかけると、冒険者ギルドの制服を着た一人の女性が恐る恐るといった感じで入ってくるではないか。
「彼女が今回の特別昇級試験の審判した受付嬢だ。彼の事に関しては彼女に聞くのが一番適切だと私は思うがね?」
「フン、勿体ぶりやがって。連れてきているのならば初めからそう言えば良いものを……」
そして帝都の冒険者ギルド。その一室では小鹿のように震える受付嬢を中心に件の冒険者についての会議が進んでいくのであった。
◆ロベルトside
「ロベルト様っ!! 見てくださいっ!! ついにアースドラゴンを一人で討伐できるようになりましたっ!!」
おかしい。
いや、使用人達に聞いても何もおかしな事は無いと皆口をそろえて言うのだが、俺は声を大にしておかしいと言う。
というのも、スルーズが『お父さん』ないし『パパ』と呼んでくれないのだ。
その事をいくら相談しても帰ってくるのは『父親というよりかは、どちらかと言うとお兄ちゃんだしねぇ』やら『まだ養女になって間もないんですよ? そんなすぐに言えるようなものではないでしょう』とか『スルーズには本当の父親がいたんですよ? やはり本当の父親にだけお父さんという言葉を使いたいのでしょう?』などと返ってくるばかりだ。
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