第32話 背伸びをしたい年頃
「難しい事を考えているようだが、まだスルーズは子供なのだから難しい事を考える必要は無いので親からの好意は無条件で受け取れば良い……とは思うのだが、子供だからこそ背伸びをしたい年頃でもあるという事か」
「……違います。一人で出来る事だから……それだけですっ!」
そうロベルト様が優しく話しかけてくるので、私は自分一人で出来る事だと力強く返す。
「ではスルーズが納得するまで頑張ってみるがいい。ただ、助けが欲しい時はちゃんと言うんだぞ?」
「はいっ!!」
するとロベルト様は私を抱きかかえると、優しく『一人でやってみると良い。でも助けが欲しい時はお父さんに言うように』と言ってくれる。
それが何だか、ロベルト様に信用してもらっているようでうれしくなってくる。
「うむ、良い返事だ」
「ちなみに……『助けが欲しい時はお父さんに言うように』との事ですが……魔術と剣術の練習に付き合って欲しいんですが……駄目でしょうか?」
「そうだな。これは一本取られたな。良いだろう。でもいつも言っているように練習のし過ぎは逆効果になるから今日だけだぞ?」
「はいっ!! ちゃんと身体を休める時間を作るように、ですよねっ!!」
「そうだな。そしてスルーズは物覚えが良いな。これは将来天才になるかもしれないな……っ!」
「ロベルト様……親馬鹿になるのはまだ早いかと、マリエルは思うのですが?」
そして私はロベルト様に抱きかかえられたまま、マリエル様と共に屋敷の敷地内にある修練場へと向かうのであった。
◆帝都冒険者ギルド本部
冒険者ランキング序列三位である戦乙女の雷の二つ名を持つテレサ・フェルディナン・ダルトワが破れ、新たなランカーが誕生した事にギルド職員たちの間は勿論、冒険者たちの間でもこの話題で持ちきりである。
「まったく、ただでさえスタンピードが起きそうな気配があるこの忙しい時期に、面倒な事をしやがって……」
「まぁまぁ、視点を変えればそのスタンピードに対抗できうる才能が一人、それも序列持ちを打ち破れるほどの実力者が現れたと思うと悪い事ばかりでは無いのでは?」
「ここでいつまでも答えの出ない事でだうだ言い合っていても仕方がないでしょう? 気になるのでしたらそのテレサを倒したという者をここへ呼び出せばいいではないの」
「それをして素直に来る者であれば何も問題はないのだが、冒険者とは基本的に強くなればなるほど扱い難くなるものだからのう」
「聞く話によると、かなり傲慢で自分勝手、自分の意見は何が何でも通すらしいではないか。そして記録には貴族の令息との記載があるがどうせ箔を付ける為の替え玉だろう。貴族連中には本当にうんざりするな。」
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