第31話 私にとって自慢の人




◆スルーズside


 私をあの地獄から救ってくださったロベルト様は凄い人だとは思っていたのだけれども、まさか序列持ち、しかもその中でも上位に入る序列三位のテレサさんに対して簡単に勝ってしまうなんて、私が思っている以上にすごい人だったんだと再認識する。


 負ける事は無いとは思っていたけれども圧倒的に勝つとは思っていなかったのだから、正に私にとって自慢の人だ。


 しかし、私の自慢になりつつあるロベルト様の凄さをどう表現すれば良いのか分からず、ただ『とってもすごい人で私のヒーローでもある人』としか表現できないのが何だか悔しいと思ってしまう。


「どうした? スルーズ。 何かあったらお父さんに言えばいい。お父さんが解決できる事であればすぐさま解決してやろう」


 そんな事を思っているとロベルト様は優しくそう私に語り掛け、頭を撫でてくれる。


 その優しさに思わず私が考えていた事を話そうとするのだが、なんとか寸前のところで止める事ができた。


 何か分からないのだけれど、それは嫌だなと思ってしまう。


 むしろ私が自分の力で解決できる問題は極力私自身が解決しようとしなければ、きっと私はロベルト様へ甘えすぎてしまうから。


 何でもかんでもロベルト様にお願いしてしまう自分が容易に想像できてしまう。


 それに……ロベルト様は私を養女にしてくれたけれど……本当の父親じゃないし、我儘ばかり言ってしまったらきっと捨てられてしまうだろう。


 だから私はロベルト様の前では良い子でいなければいけないのだ。


 勿論、それだけではなく自慢のロベルト様に嫌われたくないという思いも強い。


「い、いえ。大丈夫です。私はロベルト様の娘として恥ずかしくない娘に成るべく、自分で解決できる事は可能な限り自分で解決しようと思っていますっ!!」


 なので折角のロベルト様からの申し出ではあったのだが、私はそれを胸を張って断る。


 それと同時に今まで胸を張れる事など一つも無かった私にとって『ロベルト様の娘だから』と言って胸を張る事がとても嬉しいと思ってしまう。


 昔を思い出そうとすると悲しさや恐怖、そして怒りで潰されそうになるけれども、ロベルト様がそんな私に安心と誇りを与えてくれると共に『生きていて良い理由』を与えてくれているような感じがするのだ。


 それを上手く言葉で表現する事は難しいけれど、だからこそ私はロベルト様の娘として恥ずかしくない、自慢の娘に成らなければならないのである。


 それが恩返しでもあると思うし……。



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