第29話 何を考えているんだ? お前は



 そして俺はそう言うと攻めへと転じる。


 まずは氷柱を複数空中に作り、テレサが俺にするように飛ばすのだが、テレサと違うのはそのスピードである。


 テレサが飛ばしてくる氷柱のスピードは遅いのだが、俺が飛ばす氷柱のスピードは魔力でコントロールし、遅くしている。


 しかし氷柱の先端は鋭利なのと、十分に刺さる程度のスピードは維持しており、遅いからと言って相手にダメージを負わせることができないという訳でもない。


 その氷柱の後ろへ隠れるように移動する。


 テレサは氷柱をガードしたのを見てから動いていたのだが、それでは相手が防御してから逃げるという選択肢がわずかながらに産まれてしまうのだが、俺のようにスピードを落として飛ばした氷柱と共に移動すれば極限まで近づくことができる為相手は逃げることができない。


 そして俺はテレサが氷柱を防ぐのと同時に腕を掴んで背負い投げをして、ダウンさせると、氷柱を空中で作りテレサが起き上がるのに合わせて飛ばし、テレサがそれを対処する時に今度は足払いをしてテレサがバランスを崩すのを確認、そのまま懐に潜り込んで上へと蹴り上げ空中へと飛ばし、蹴り技と同時に空中に仕込んでいた巨大な氷の塊をテレサに向けて落とし、その巨大な氷の塊に蹴り技の威力で貼り付け状態になっているテレサもろとも氷の塊を蹴り技で下から破壊し、テレサが吹き飛んで行く前に掴むとそのまま地面へ振り落とす。


「がはっ!!」

「どうだ? 飛び道具は相手を崩す目的であれば遅い方が固めやすくて崩しやすくなる。勉強になっただろう? それと、先程の流れは『236P→足払い→下K(236H仕込み)→JC→623K→空中投げ→236P設置』という、基礎中の基礎だ。覚えておくと良いだろう」


 これの強い所は設置した氷柱を相手が起き上がる時には発射せず、先に俺が低空ダッシュで相手を捲るか捲らないかのタイミングで発射して崩しに行くという方法も取れる事である。


 その為起き攻めがかなり強い武器スキルだというのにテレサは相手からダウンを奪おうとするのではなく、ただ氷柱を遠距離で飛ばしてくるだけという、まさに素人の動きであると言えよう。


「許さない……認めない……貴族が私に勝つなど……それも同じ氷系統で……あっていい訳がないだろうっ!!」

「大技を使うのは良いが閉鎖された地下空間で、俺達だけならばまだしも俺の娘や側仕えメイド、審判をしてくれている受付嬢に、上の階にいる冒険者達やギルド職員達がいるというのに何を考えているんだ? お前は」

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