第27話 本気を出してくれるのであれば何でも良い



「許すわけがないだろう? 流石に舐めすぎだ」


 それを聞いた受付嬢は俺に縋りついて涙ながらに謝罪して来るのだが、当然許すつもり等毛頭ない。


 というかコイツに関しては最初から最後まで俺様の事を舐めすぎだろう。


 それが『序列三位の冒険者、テレサ・フェルディナン・ダルトワよりも強い』と分かった瞬間に掌を返すくらいなのであれば、初めから中立の立場を貫き通せば良かっただけである。


 俺の言葉は聞く耳持たず、テレサの言葉だけ聞いていたツケを払う事になったのは結局自業自得ではないか。


 にも関わらず何故俺が『謝罪されただけで』許さなければならないのか意味が分からない。


「ぐ……っ。私が不甲斐ないせいであなたを不安にさせてごめんなさいね。でももう大丈夫、次からは手を抜かず本気で行くから」

「て、テレサさん……っ!!」


 受付嬢の顔が青色から土色へと変化していくのだが、テレサが無事だと分かると一気に血色が良くなるではないか。


 その事からもこの受付嬢は何も学んでいないどころか、中立でなかった事を反省すらしていない事が窺えて来る。


 今までの俺の行いでこの受付嬢に対して悪い印象を持たれていたと言うのであればまだ分かるし俺も自業自得であると思うのだが……過去の記憶を遡ってもギルド側に迷惑をかけたのは冒険者登録をする時に大金を積んで金で買った時くらいしか、今の俺から見てもそれ以外思いつかないわけで……。


 しかもそれは帝都のギルドの話であり、ここではない。


「ランカーというからにはさぞ強いのだろうと初めは期待していたのだが、序列三位でありながら自分と俺との差すら分からないようでは程度が知れるな……。残念でならない」

「それは私の方だな。奇襲が成功したからと言って調子に乗らないでもらいたいものだ」


 テレサは俺の蹴り技を受け止めた腕が折れていたようで、それをもう片方の手で回復魔術をかけながら話す。


「先ほどの攻撃を奇襲と思っているのであれば貴様の折れた腕を治される前に攻撃をしていただろう。それに今俺が攻撃せずに折れた腕に回復魔術をかけているのを妨害しないのは、貴様の腕が回復したところで俺には勝てないと理解しているからだ」

「そうだな、私が貴様の実力を過少に判断して相手をしていた事は認めよう。故に、もう手を抜くのは止めて本気で殺しに行くとしよう」

「防御壁を突破できなかった時点で本気出せよ……と言いたいのだが、本気を出したお前のプライドを粉々にしたいと思っている俺からすれば本気を出してくれるのであれば何でも良い」

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