第26話 許してくださいぃっ!!



 そんな事を俺が思っている等とは露ほども思っていないであろうテレサは、剣に冷気を纏うと、そのまま剣を振るう。


 するとその剣から氷柱状の先の尖った氷を複数生み出すと、俺へ飛ばしてくるではないか。


 しかもそれだけではなく、テレサは俺が飛んでくる氷柱状の氷を防いでいる隙に右へ回り込むと更に氷を飛ばして来るかと思えば、今度は一気に接近して来て俺へと切りかかってくる。


 その斬撃を防ぎ、反撃しようとしたその時、テレサは意味もないタイミングでジャンプすると、テレサの身体で隠していたのであろう人一人程の大きさの氷柱状の氷をいつの間にか作っており、それをテレサがジャンプする動作に合わせて飛ばして来るではないか。


 そして、俺がその氷柱状の氷を対処しようとするとテレサは頭上からも氷を飛ばして来る。


「流石に二方面への攻撃は防ぎようが無いだろう」


 さらにテレサはとどめとばかりに巨大な球体の氷を真上から勢いを付けて射出する。


「この私に喧嘩を売らなければ殺す事もなかったというのに……馬鹿な男だな」

「こ、殺さないって約束したじゃないですかっ!! テレサさんっ!! これで先ほどの貴族の親が特別昇級試験を許可した私に対して責任を取るように迫って来たらどうするんですかっ!!」

「大丈夫だ。その時は私が返り討ちにしてあげよう。いくら公爵家と言えども良くて冒険者ランクS級前後と言ったところだろうし、その程度であれば私が負ける訳がない。その貴族を殺して国外にでも逃げれば全て解決問題なしだ」

「問題大ありですよっ!! …………へ? テレサさん後ろっ!!」

「はい? ぐっ!?」


 なんか俺を勝手に殺した体で二人が話始めるので、一気にテレサの背後に周ると、右脇腹を思いっきり横蹴りを入れるのだが、受付嬢のせいでテレサが気付くのが一瞬だけ早まってしまったのか、腕で受け止められてしまう。


 それでも俺の蹴りを受け止めきれる事ができず、そのまま修練場の壁へと激突して『どしゃり』という音を立てて地面に落ちる。


「おい、受付嬢。お前今何をやったのか理解できているのか? 特別昇級試験で一方が有利になるように試合を運んだこと、この模擬戦が終わった後ちゃんと説明してもらうから覚悟しとけよ?」


 そして受付嬢の指摘が無ければテレサのガードは間に合わず俺の蹴りが通っていたであろう事からも明らかにこの受付嬢の妨害行為と判断した俺は、この模擬戦が終わったら覚悟しておけと釘を刺す。


「す、すみませんっ!! 試合が終わったものと思い気が緩んでいただけで、けしてロベルト様を妨害しようだとか、不利になるようにだとか思って発した訳ではないので許してくださいぃっ!!」


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